セミナー開催のご挨拶

生衛業支援セミナー実行委員長 河口 勝仁 様よりご挨拶

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター理事長 小池 広昭 様よりご挨拶

生衛業支援セミナー実行委員長 河口 勝仁

生衛業支援セミナー開会の挨拶(要旨)

只今、ご紹介を受けました生衛業支援セミナー実行委員会の委員長の河口でございます。よろしくお願いいたします。

今日のセミナーの開催にあたり 一言ご挨拶を申し上げます。

本日は、ご多忙の中、また、お足元の悪い中ご出席をいただき、誠にありがとうございます。小池理事長のご挨拶にもありましたように、飲食関係の組合員からなるセミナー実行委員会において、色々協議しまして、本セミナーで2つの講演をすることといたしました。

1つ目は、飲食店やホテル旅館において、お客様に提供する食品がすべて安全であるということは営業者として基本中の基本でありますが、食品衛生法の一部改正により、原則すべての食品関係の営業者にハサップもしくは、ハサップの考え方に沿った衛生管理の導入が義務付けられました。

我々、営業者は、このハサップについて理解を深めて、今まで以上にお客様に信頼される衛生管理を確実に実行する必要性があります。

そこで、今回、大坂成蹊短期大学の牧野壮一教授様にお越し頂き「過去の失敗事例から考えるお店の衛生管理」と題して講演をいただきます。

特に食中毒などの事例を通して、お店の衛生管理のポイントやハサップ義務化に向けてのお話をしていただきます。皆様のお店で日々行っている衛生管理に盲点はないのかご確認いただき、衛生管理のレベルアップを図っていただきますよう、よろしくお願いします。

2つ目ですが、現在、北海道の景気は上向きとは言えません。各組合員の経営は、まだまだ厳しい状況にあるかと思います。特に胆振東部地震後の、利益がなかなか回復していないお店も多くあるかと思います。

そこで、本日は、中小企業診断士の髙田雅文先生に「売上アップ、顧客獲得のノウハウ」についての、お話をいただきます。特に収益力アップの方策や顧客獲得について、これまでのコンサルの経験をもとに今日から役立つ具体的なアドバイスをお願いしております。

今回、このセミナーで得た知識を皆様の今後の経営に活用していただきたいと思います。

最後なりますが、本日、お集まりの皆様方のご健勝を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター理事長 小池 広昭

生衛業支援セミナー開会の挨拶(要旨)

只今、紹介を受けました北海道生活衛生営業指導センター理事長の小池でございます。本セミナーの開会にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

本日は、ご多忙の中、多くの皆様にご出席いただき、感謝申し上げます。

今年は、北海道の麺類飲食組合、社交飲食組合、喫茶飲食組合の創立50周年の節目の年にあたります。この節目の年にあたり、飲食、食肉関係の6つの組合から実行委員をお出しいただき、セミナーの内容などの検討をお願いし、本日の開催となったところでございます。

本日のセミナーは、食品の安全確保をテーマとした講演を大阪成蹊短期大学の牧野先生にお願いし、続きまして、売上アップ 顧客獲得をテーマとした講演を中小企業診断士の髙田先生にお願いしております。

是非、最後までお付き合いいただければ幸いでございます。

このセミナーには、北海道からの助成とご後援、札幌市のご後援をいただいております。この場をお借りまして感謝申し上げます。

当指導センターでは、生衛業の方々の衛生確保の向上や経営の健全化をとおして道民のよりよい生活の営みに 寄与できればと考えております。

最後に本日のセミナーが実りあるものとなりますように、また、 お集まりの皆様方のご健康を祈念いたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。

本日は、よろしくお願いいたします。

講 演

第一部「過去の失敗事例から考えるお店の衛生管理 (概要)」講師 大阪成蹊短期大学 教授 牧野 壮一 氏

過去の失敗事例から考えるお店の衛生管理 (概要)

講師 大阪成蹊短期大学 教授 牧野 壮一 氏

 食の安全安心の概念から始めて、過去の失敗事例を紹介しながら衛生管理について考えてみたいと思います。最後にHACCP(ハサップ)の義務化への対応とそのもととなったアメリカにおけるRetail HACCP(小売店のハサップ)についても簡単にご紹介いたします。

1.衛生管理について考えてみよう

食の安全安心について

安全安心という言葉はよく使われますが、意味は違う言葉です。安全は客観的、科学的な概念ですが、安心は個人の感情によるものです。しっかりと分けて考えなければなりません。今日は、主に安全について、話したいと思います。

食の安全を損なう要因であるハザード(危害)とは、健康に悪影響を及ぼす原因となる可能性のある食品中の物質や食品の状態をいいます。HACCPのHはハザード(Hazard)のHです。

細菌性食中毒の分類

細菌による食中毒は3種類に分けられます。

  1. 感染型:食品中で増殖し体内入る、あるいは少量の菌が食品に付着し体内に入り、腸の中で増殖して腸の細胞を壊し、主に胃腸炎をおこします。
  2. 毒素型:黄色ブドウ球菌のように食品中で増殖し毒素を作るものです。この場合は毒素が産生された後、加熱などで細菌が死んでも毒素が体内に入り食中毒が起きます。
  3. 体内毒素型:ウエルシュ菌のように体内で毒素を作り、この毒素によって症状がでるものです。

細菌以外のノロウイルス、寄生虫のアニサキスは感染型に入ります。

飲食店を経営している方には、どのような危害がどのような病気を起こすのかを最低限知っていることが大切です。つまりは敵を知ることから始めましょう。

細菌の増殖

細菌の増殖ですが、1個が2個、2個が4個と倍々に増えます。例えば、腸炎ビブリオ菌1個は10分で2個になり、20分で4個になり、2時間後には約4,000個に増えます。もし仮に、食品に付着した細菌数が1万個であれば、増殖の条件が良ければ、すぐにその1万倍に増えます。2時間で食中毒が起きる細菌数に達してしまいます。このような状況にならないようにしなければなりません。

細菌の増殖に必要な5つの因子について

その5つは水分、温度、pH、酸素、塩濃度です。例えば、細菌によっては酸素がない方が好都合な細菌がいます。ボツリヌス菌やウエルシュ菌は酸素があると死んでしまいますが、逆に酸素が無いところ(真空状態)では急激に増えます。真空状態で増える細菌がいることは知っておいてください。

芽胞形成菌

細菌によっては芽胞を作るものがあります。普通の栄養状態では増殖しますが、栄養分などが不足したり、乾燥や熱が加わり、増殖しにくくなると、自らを守るために芽胞という形に変わります。芽胞は、生存に必要なたんぱく質や遺伝子などを芯部に集め、周りをたんぱく質の層で何層にもコーティングしており、ゴルフボールのような構造になっています。

栄養状態が悪い状況では、死なずに眠った状態で存在し、栄養状態が良くなると発芽して増殖を始めます。芽胞は熱や乾燥、消毒薬、紫外線に強く、ボツリヌス菌では芽胞の殺菌には120℃で4~5分ほどかかります。

2.過去の失敗例を考えてみよう。

多くの先人達は、失敗を次の成長の為に活かして対応をしてきました。そこで、今までの失敗事例を振り返って考えてみたいと思います。

失敗の原因は以下の4点があります。

  1. 未知:知らないがゆえに、失敗をしてしまうことがあります。たくさん勉強して、失敗をバネに成長していくことが大切です。
  2. 無知:本来知っておくべきことなのに、不勉強がゆえに失敗をしてしまうことです。普段から意識して勉強をしておくことが大事です。
  3. 不注意:注意しておけば防げたはずなのに、不注意が原因で失敗をしてしまうこともあります。体調や精神が不安定で起こることもあります。
  4. 誤判断:判断ミスによる失敗です。自らの癖も併せて分析することも大切です。
ハインリッヒの法則

失敗が起こって、個人を責めるのではなく、次の対応に活かすことが重要です。

ハインリッヒの法則(経験則)をご紹介します。

重大な1件の事故がある場合、その前兆として29件の軽微な事故があり、さらにその裏には300件のヒヤリ、ハットすることが起きている、という考え方です。このヒアリとする、ハットする時点で対策をとることができれば、重大な事故の発生を抑えることができるという考え方です。次に、実際の事例をご紹介します。

O157による食中毒事件

22年前、1996年の夏、腸管出血性大腸菌O157による大きな事件が大阪府の堺市中心に起きました。多数の患者が出て、亡くなられる人もいました。その後、同年10月に北海道の帯広市でO157事件が発生しています。

実は、大阪府の発生の前、1990年に埼玉県でO157の食中毒事件が起き、2名の子供が亡くなられています。初めてのO157事件なので、医師たちは治療に大変苦労され、詳細なデータを残し、報告書を作成しました。しかし、この貴重な報告が大阪府のO157事例の対応に反映されなかったのが残念です。

さて、帯広市で発生したO157食中毒事件では、原因食品はポテトサラダでした。調理は、まずじゃがいもを茹で、胡瓜とハムを切ります。その後、じゃがいもの煮汁をすて、鍋ごと冷蔵庫に入れます。胡瓜には軽く塩を振り、ハムも個別に冷蔵庫に入れ、翌日の朝、すべての材料を混ぜあわせ、味付けをして作りました。

再現実験を行うと、冷蔵庫内で一晩たっても庫内温度は15~20℃で、食材の中心温度が十分に下がっていませんでした。さらに胡瓜、ソーセージを使ってO157を添加し、この冷蔵庫に保管すると、O157の増殖が観察されました。つまり、野菜の中でも細菌が増えることが分かりました。

幸いなことに、この帯広市での事件では、大阪府での教訓を生かし、関係者の迅速な判断で、重症の2名の患者を緊急に札幌の医療機関へヘリコプターで搬送し、2名の命は救われました。

雪印食中毒事件(2000年)

これも北海道の事件です。2000年に雪印の低脂肪乳による集団食中毒事件が関西で発生しました。大阪工場で作られた低脂肪乳の黄色ブドウ球菌による食中毒ですが、原料の脱脂粉乳は大樹工場で作られました。

黄色ブドウ球菌ですが、ご存知とは思いますが、食品中で増殖し耐熱性の毒素を産生します。ブドウ球菌の毒素は100℃で煮沸しても不活化されない毒素です。

この事故の原因は、操業中に停電があり、配管の中に残っていた原料乳中でブドウ球菌が増殖し、毒素が作られ、停電回復後に、殺菌され乾燥された脱脂粉乳を使用したことでした。殺菌をすれば良いとの考えで、毒素の活性が残ったまま大阪工場に運ばれたケースです。食中毒について不勉強であったわけです。食中毒を防ぐには、微生物学の基礎を最低限知っていなければいけないでしょう。

実は、雪印乳業は、45年ほど前に同様の事件を起こしています。四半世紀たつと教訓が形骸化する良い例でしょう。衛生教育の重要性がわかると思います。

ウエルシュ菌食中毒

2015年、9~11月にウエルシュ菌による食中毒が高齢者施設や中華蕎麦屋、大量調理施設で発生しました。ウエルシュ菌は腸管内で増えて毒素を出しますが、偏性嫌気性で空気がないところで増殖し、そして芽胞を作ります。芽胞は100℃で1~6時間生きています。他の細菌と異なり、ウエルシュ菌は増殖の温度域が高く、43~45℃で良く増殖し、50℃でも増殖します。

カレーやシチューなどの大量調理で良く起きており、特に肉の入っている料理で起きやすい特徴があります。生き残った芽胞は温度が50℃くらいになると増殖します。煮込むことで酸素が無くなるので、ウエルシュ菌にとって好条件になっています。 そして、食品と一緒に体内に入り、体の中で毒素を作ることとなります。ただし、この毒素は熱には弱いです。

では、どうやって防いだらいいでしょうか?まずは、再加熱すること。冷却をできるだけ早くすること。すぐ食べること。小分けにしておく。などが対策です。

大量調理では、50℃から15℃以下に急速に冷却できず、緩慢な冷却となりがちで食中毒が起きやすくなります。

ノロウイルス

昨年度の原因物質別食中毒発生件数ですが、1位はカンピロバクター、2位がアニサキス、3位がノロウイルスとなっています。しかし、患者数ではノロウイルスが5割以上となっており、集団事例が多いことがわかります。季節では今頃から多くなります。症状は嘔吐と下痢が一般的で、1~2日くらいで下痢が止まります。ただし、症状が消失しても1週間から数週間はウイルスを糞便中に排出します。下痢が止まったと思っても糞便中にはウイルスが残っていることになります。

ノロウイルスは、カキなどの二枚貝の中腸線に濃縮されます。非常に小さいウイルスで、アルコールなどの消毒薬や加熱に強く、感染性を失わせるには85~90℃で90秒以上必要です。

感染経路は、①加熱不十分なノロウイルスを含んだ食品を食べる。②感染者が調理した食品にウイルスが付着し、その食品を食べる。③患者の吐物等を処理した後、吐物等が乾燥し、ウイルスが空気中に舞って体内に入る(感染症)、です。また、ノロウイルスの感染は、ほぼ6割が従事者由来と言われています。また、感染者の4割位は非発症者でありますので、糞便中にウイルスを排出している人がいることになります。

食品取扱い時の対策としては、調理従事者は、とにかく手を洗うことが重要です。体調が悪い時には作業をしないようにします。このような注意が守られてきているので、10年前に比べて調理従事者でノロウイルスを持っている人は、10分の1位に減少していると言われています。それでもノロウイルス食中毒は、まだ問題となっています。カキなどは中心部まで加熱することが大切です。85℃から90℃で90秒以上の加熱が必要です。一般的に、ノロウイルスは酸や熱に強く、塩素にも強い性質があります。塩素で消毒するなら有機物が少ない条件で200ppmの濃度が必要で、吐物や糞便であれば1,000ppm以上の濃度が必要です。環境中では、乾燥に強く、液体中で2か月ほど生存しており、冷凍でもマイナス20℃で数年間生存できます。また、吐物ですが、実験では高さ1mから嘔吐したとして、2~3m離れたところまで消毒の必要があります。高齢者のケア施設や集団で生活している施設で、このような嘔吐があった場合には消毒範囲に注意が必要です。

冷凍メンチカツ食中毒(2016年)

2016年 冷凍メンチカツによる食中毒が起きました。生肉にパン粉などを付けた「そうざい半製品」で、調理法には170℃から175℃の油で6分間の加熱と記載されていました。調理での加熱不十分が原因であります。

本当に中心部まで加熱できているか調査した実験があります。温度や加熱時間、使用する油の量などで中心部が十分過熱されていないケースがありました。そこで厚労省では、食肉調理品(メンチカツやハンバーグ等)の未加熱状態での食品は中心部の色が変化するまで十分に加熱するよう注意喚起しています。また、未加熱食品から、他の加熱しないで食べる食品が汚染されることを防ぐために手をよく洗うこと、菜箸やトングを使いわけること、器具をその都度洗浄殺菌をして使用することなどの注意喚起をしています。

カンピロバクター食中毒

国内でカンピロバクター食中毒の発生が減少しない状況にあります。原因は家畜や家禽の肉ですが、鶏肉が大半を占めます。ペットからの感染事例もありますが、やはり鶏肉が多いです。

加熱用の鶏肉であることを知っていて、生でお客様に提供し、食中毒を発生させた場合は告発されることもあります。国では、飲食店に生や加熱不十分な鶏肉の提供中止を指導している状況です。

3.HACCPについて考えてみよう

今年6月に食品衛生法の一部が改正されました。7つの改正点がありますが、その中で、HACCPの義務化が決まりました。

HACCPとはなにか?

簡単な例で説明します。例えば、薄皮饅頭とそば饅頭を同じ場所で製造している和菓子屋で、もし薄皮饅頭にそば粉が混じると、表示を信用してそばアレルギーの人が薄皮饅頭を購入したとします。この方は、混入したそば粉によりショックを起こすかもしれません。この場合、薄皮饅頭にとってそば粉が危害になります。では、危害を防ぐにはどうすればいいでしょうか。科学的に考えてみましょう。まず工程を書き出し、工程ごとに危害の混入を防ぐ予防法を考えます。マニュアルを作成し、毎日チェックをしていきます。これがHACCPです。

HACCP義務化の背景について

先進国では、すでに義務化されており、国際的な食品の流通の中で、競争力を持つためにHACCPの義務化は必須であり、輸出・輸入の拡大に必要です。また、2020年の東京オリンピックの開催時には、我国の食品衛生管理に関して先進国であるとアピールしたい狙いもあります。すでに大規模な牛乳などの製造工場や食品工場などではHACCPは導入されていますので、今回、普及が進んでいない中小規模の施設を対象としてHACCPの義務化が重要だと思います。国では、“HACCPの考え方を取り入れた衛生管理”を実行するために各業界団体が作成した手引書を参考に衛生管理を行うようにと指導しています。例えば、日本食品衛生協会では一般飲食店用の手引き書を作成しています。このような手引き書を参考に各お店で衛生管理を行うこととなります。

一般飲食店が行うHACCPについて

①衛生管理計画の作成、②計画に基づく実施、③確認・記録が基本です。

まず一般的衛生管理のポイントはスライドに示したように6つあり、“いつ”、“どのように”、“問題があったときはどうするのか”、を決めておきます。例えば、原材料の受入は、いつ行うのか、この例では納入時に実施することとなります。冷蔵庫などの庫内温度の確認は、いつ行うのか、この例では始業前に実施することとしています。お店に、食品に合わせて決めていくことになります。

重要管理ポイントは、調理方法に応じて3つのグリープに分けて考えます。①冷たいまま提供、②加熱して温かいまま提供、③加熱後、冷まして提供や再加熱して提供、する食品群に分けます。①グループは、保管の温度を維持し細菌を増やさないこと、②のグループは熱で細菌を死滅させ、そのまま提供すること、③のグループは、急速に冷却するや再加熱し細菌を死滅させること、が重要となります。それぞれのお店で提供するメニューに当てはめてみてください。

重要管理のポイントの1つは温度です。10℃から60℃の温度帯をなるべく短くすることです。大事なのは冷却方法です。アメリカでは2時間以内に21℃以下にすることとしていますが、日本の給食施設ではもっと厳しく、1時間以内に10℃なるように指導しています。加熱する場合では、75℃1分以上、中心部まで加熱することがポイントです。

以上の作業のそれぞれについて、1日1日記録する、これを習慣化することが重要です。また、例えばハンバーグの中が赤いとクレームがあったら、そのことをきちんと記録しておくことです。 このようなクレームもしっかりと記録することです。

最後に、結果を記録するほか、問題が起きたら、その内容や対処を記録することが重要です。さらに、定期的に記録を見て、同じ問題が発生している場合には対策を検討することも重要です。

3.1アメリカのRetail HACCP

アメリカでは、一般のレストランにおいてHACCP(Retail HACCP:小売店のHACCP)が義務化されています。その背景は、1900年代後半のアメリカでは食中毒がなかなか減少しない状況で、原因として考えられたことは、多様な民族が暮らしており、様々な食材があり、食習慣も様々あり、誤った食品の取り扱いがされたり、英語が十分に話せない従事者、外国籍の人の衛生管理についての理解不足などです。このため、誰でも一定の基準で食品の取り扱いができるようなマニュアルが必要とされ、1999年に義務化されました。

日本人は性善説が基本にありますが、アメリカでは性悪説で、人は間違いを犯す、だからマニュアルが必要であり、100%近い管理をするには監視が必要であるとの考えが基本です。Retail HACCPの導入により、それ以前と比べ食中毒患者数が4割程度減少しました。

詳細を説明する時間がありませんが、アメリカのRetail HACCPにおける食材・食品の購入から提供までの工程別のポイントを資料としてお渡ししました。実際のマニュアルは膨大な量になります。お見せするのはその一部ですが、是非、参考にしてください。例えば、保管・保全の工程の箇所では、全ての食品や食品保管に関連する機械は、床から上に15cm以上離す。壁からも離す。食品の使用順序はファーストインファーストアウト(FIFO)、つまり「先入れ、先出しを守る」などが書かれています。このように工程別にポイントが示されておりますので、参考にしてください。

4.明日の飲食業について考えてみよう

すでにHACCPは義務化されました。是非以下の点を勉強してください。①食品の5Sを知りましょう。②食品の素材を知り、素材ごとに起こりえる健康被害を知りましょう。③健康被害の予防を知りましょう。

衛生管理の出発点は原材料です。原材料の安全性の確保が重要です。食品の安全・安心は値段では表せません。お客様に見せない大事なレシピです。

では、どこから情報を得たらいいのでしょうか?ネットや行政から情報を得る、組合などの研修会に参加する、資格を取る、コンサルタントを頼む、大学などのリカレント教育に参加するなどがあります。以前、勤務していました帯広畜産大学でもリカレント教育を行っております。

いずれにしても飲食店が各々で、“HACCPの考え方を取り入れた衛生管理”を組み立てるのは大変だと思います。組合や協会がまとめて行うなど、またコンサルタント会社などに依頼することなどで対応を考えた方が良いかもしれません。このようなことを行っていれば、HACCPに基づく衛生管理に対応できるはずです。決してHACCPは難しくありません。少し頑張れば、お客様の信用を得られ、利益も生まれてくるはずです。

最後に、世界ではアメリカのRetail HACCPが標準となっています。しかし、Retail HACCPもの多くの課題が残っています。しかしアメリカで起こったことは、10年程度で日本でも起こります。一般衛生管理をしっかり行いHACCPに対応していきましょう。

第二部「売上アップ、顧客獲得のノウハウ(概要)」講師 中小企業診断士 たかまさ経営総研代表取締役 髙田 雅文 氏

売上アップ、顧客獲得のノウハウ(概要)

講師 中小企業診断士 たかまさ経営総研代表取締役 髙田 雅文 氏

今日は、売上アップと顧客獲得のノウハウについて、お話させていただきます。

ご紹介するノウハウは、非常に取り組み安く、簡単で、本当に効果があるのか疑問に思われる方も多いと思いますが、実際に行ってみて本当に効果があったものを選んで、ご紹介します。

私は大学卒業後、札幌の旅行会社に勤めていました。旅行商品は形がないものなので、非常に売ることが難しかったです。形があるものの方が販売しやすいです。形がないものをどうやって売ればいいのかを会社の企画部にいる時によく考えていました。勤めていた旅行会社は、札幌市内に5、6店舗の居酒屋も経営していましたので、飲食店にも興味がありました。今は、飲食店のコンサルを得意としております。

これからの時代について

スライドを見てください、皆さんご存知のとおり、日本はすでに人口減少の時代に突入しており、これからはどんどん人口が減って行きます。

このスライドの年表は、「未来の年表」という本に書かれていたものですが、結構、衝撃的な未来が書かれています。来年になるとIT産業で退職者が多く出てきます。これからの日本経済は、ITで引っ張って行くという時期に大量の退職者が出てきてしまいます。それを補う若い人材がいなくなります。優秀な人材のほとんどがIT産業に取られてしまい、他の業種業態では人材が確保できなくなってきます。今でもありますが、人手不足で倒産する企業が増えて来るでしょう。

2020年には女性の半数以上が50歳を超えてしまいます。子育ての施策を取ったとしても、なかなか人口が増えない状況となり、人を多く使う飲食産業などでは、日本人が採用できなくなって来るので、外国人を活用しないとならない状況になります。

2021年には、介護離職が大量発生すると書かれています。働き手の中で一番人口構成が多いのが団塊ジュニア世代ですが、団塊ジュニアの親が後期高齢者になる時期が2021年になります。後期高齢者の年齢になると介護の発生率が高くなります。今の団塊ジュニアの大半が親元を離れて働いているので、親の介護が必要となった時に、介護のため親元に帰るようになります。また、フルタイム労働からパート労働にかわり、介護を行うようになると予想されます。

こういった厳しい状況の中でも勝ち組の企業があるので、皆さんにはうまく経営を切り盛りしていって、勝ち組になっていただきたいです。

本日の伝えたいこと

本日は、大切な3つのことを説明します。

まずは、1つ目は売上の増加です。コストを下げることも大事ですが、やはり売上を上げることが大切です。 売上を上げるためには、売上を5つに分解して考えると良いです。

2つ目は、「ベネフィット」ということを考えることです。ベネフィットは、非常に大事な概念です。お客さんが欲しいのは、商品そのものではありません。商品のベネフィットを伝えなければ、なかなか商品は売れません。

3つ目は、顧客マインドフロー分析です。お客さんが皆さんのお店をはじめて知ってから常連になるまでにお客さんは様々な心理的な階段を登って行っています。どこの階段で、つまずいているのかを知って、そこの階段を低くして常連客になってもらう方法です。 今日は、この3点を理解していただきたいと思います。

売り上げがV字回復した例

今日紹介するポイントを実直に行った企業が売上をⅤ字回復した例があります。ある焼肉店で売上の減少が続いたため、コンサルの依頼がありました。

私が2011年の冬から支援に入りました。2011年という年は、東日本大震災が発生し、福島で原発事故が起きた年です。何がここの焼き肉屋の経営にダメージを与えたかと言いますと、このお店は東北牛を扱っていることを売りにしたお店で有名だったのです。原発事故の影響で東北の食材が消費者に非常に敬遠されたためです。このためこの焼き肉屋さんは、非常に苦労していました。

売上がどんどん下がり、色々手を打ちましたが、何をやってもだめで、私にコンサルの依頼がきました。そこで、今日、私が紹介するようなアドバイスを受けて、対策を実行し、売上を回復していきました。この2011年の冬には、岩見沢では大変な大雪が降り、外出は危険で、住民が外出を控えるような状況でした。岩見沢の他の飲食店のほとんどで売上が下がった状況でも、このお店の売上は伸びました。

売上アップ顧客獲得の実践ノウハウ

これから5つを説明いたします。

今日は、飲食店の方々が多いので、飲食店中心にお話します。他の業態の方は自分の業界に当てはめて考えてお聞きください。

繁盛への道 その1

差別化できるコンセプトをつくることです。

これからは、とんがって特徴を出していかないとお客さんから選ばれるお店にはなりません。皆さんには、自分のお店のコンセプトを打ち出していただきたいです。コンセツトは絞り切れているか、一度、自分のお店に問いかけてみてください。 良いコンセプトは、来店する動機になります。お客さんは、そういうお店なら行ってみたいとなります。商圏も拡大します。お客さんは、そのようなお店なら隣町であっても行ってみたいとなります。特徴のない店であれば、商圏は半径1Kmから500m位です。とんがったお店は、口コミを呼びます。そうなると広告宣伝費をかけなくても広がっていきます。お客さんがSNSなどでお店を広めてくれます。

コンセプトは経営戦略の軸になるので、このコンセプトのお店なら、これはやらなくて良いということがわかってきます。売上が下がってくると色々なことをやりたがります。やらなくていいことをやってしまい、なんとなくお店の特徴がぼけていって経営が悪くなるお店があります。自分の店は、こういうことは、やらないと決めれば、ブレはなくなり、とんがったコンセプトのまま営業できますので、経営戦略の軸になりますということです。 皆さんのお店もとんがったお店になっていなければ、もう一度コンセプトを練り直すことが必要かどうか、考えてみてください。

繁盛への道 その2

2つ目はF/Lコストを管理することです。

これは飲食店で使う用語で、Food食材費とLabor人件費の比です。飲食店では、どうしても人件費が大きいので、このコストを管理することです。あくまで管理がポイントであって削減するではありません。無理に削ってしまうと、まずいですよということもお伝えします。まず、基本的に飲食店は、F/Lコストが60%以内に収まっていないと、なかなか黒字になりません。黒字の飲食店のほとんどが、F/Lコストの平均は50から60%です。なお、寿司屋では原材料費が高いので、F/Lコストは65%くらいです。皆さんの飲食店はどうでしょうか、一度、調べていただきたいです。特に、これからは、人件費がかかるようになります。すでに60%を超えるお店も出てきています。

飲食店の損益モデル

飲食店の損益モデルを示しましたが、注目していただきたいコストは、初期条件費用と呼ばれている家賃、支払金利、減価償却費などです。これらは、最初に設定したあと、なかなかコストダウンができません。家賃は交渉で少し落ちる可能性がありますが、あまり下がりません。飲食店の初期条件費は、だいたいが約20%です。何を意味しているかというと、初期条件×5は100%です。皆さんのお店は、初期条件を5倍にした額が売上高になっていますでしょうか?

初期条件費の5倍(100%)より上の売上高があっても赤字ならば、ほかの経費を下げる必要があります。100%より下であるなら、このままでは経費が賄えない状況になりますので、この場合には売上を上げなければなりません。では、どうやって売上をあげるのか、ここが非常に難しいところです。

飲食店の損益モデル

飲食店の損益モデルを示しましたが、注目していただきたいコストは、初期条件費用と呼ばれている家賃、支払金利、減価償却費などです。これらは、最初に設定したあと、なかなかコストダウンができません。家賃は交渉で少し落ちる可能性がありますが、あまり下がりません。飲食店の初期条件費は、だいたいが約20%です。何を意味しているかというと、初期条件×5は100%です。皆さんのお店は、初期条件を5倍にした額が売上高になっていますでしょうか?

初期条件費の5倍(100%)より上の売上高があっても赤字ならば、ほかの経費を下げる必要があります。100%より下であるなら、このままでは経費が賄えない状況になりますので、この場合には売上を上げなければなりません。では、どうやって売上をあげるのか、ここが非常に難しいところです。

繁盛への道 その3

売上を上げる5原則を考えることです。

売上は、客数×客単価であるとの公式は経営の教科書に書いてあります。もっと細かく分解する必要がありますということをお伝えします。ただ、売上を上げろと言われても、アイデアは出てきません。もっと客数と客単価を分解しないと良いアイデアは出ません。

客数は2つに分解することができます。1つは新規顧客を増やすこと、2つ目は流出顧客の減少です。これは、一度店に来たお客さんが来なくなってしまうことをいかに減少させるかということです。この2点を考えると客数は伸びます。一般的には、リピーターを増やすと考えるかもしれませんが、リピーターは一定ですので、リピーターを一定数抱えても客数は増えません。新規客を増やすか、流出顧客を減らす、どちらかしかありません。

次に客単価の方ですが、これは結構、経営にインパクトがあります。客単価をあげるには3つポイントがあります。一つ目はお客さんの来店頻度を増加させることです。一年間に何回来店するのか、一か月に1回来るお客さんが2回来ると売上は2倍になります。このように頻度を増加させるには、どうゆうふうに考えればいいのかを考えたことがありますでしょうか?今日は、理容室や美容室の方は来ていないようですが、理美容業界では、購買頻度増加はものすごく経営にインパクトがあります。男性は、一か月に1回散髪するパターンが多いです。それだと一年間に12回ですが、一か月に1回の頻度であるのをいつもより3日だけ早く来ていただければ、年に13回の来店になります。そのお店に1,000人の顧客がいたら、散髪料金の1,000倍の収入が、その年の収入に上乗せになります。

次に飲食店に効果あるのは、お客さんの注文する点数を増やすという購買点数の増大です。今まで、牛丼しか食べないで帰るお客さんに追加でコーヒーやデザートなど、もう1品注文していただければ、それだけですごく経営にインパクトがあります。みなさんのお店で、いま来ているお客さんのすべてがもう1品追加してくれたら、経営が楽になりますね。では、どうやったら1品追加してもらえるか、あまり考えていない経営者の方がいたら、是非考えてみてください。

次は1点あたり商品単価の向上です。価格を高くすると売上は上がります。ここで注意していただきたいのは、ただ単に値上げすると客数が減少するので、難しいところです。価格を上げてもお客様が納得するには、どうすればいいのだろうかと考えることが必要です。飲食店に入ってみると、これは安すぎるのではと思うのが見受けられます。これは50円値上げしてもお客さんは減らないのではないかというケースもありますので、一度、価格を見直してみてください。このように売上を5つに分解して考えるとアイデアが出ますので、やってみてください。

繁盛への道 その4

ベネフィットをお客さんに伝えましょうです。

ベネフィットとは何か?商品そのものではなく、商品・サービスから得られるお客さんのメリットです。お客さんはその商品が欲しいからか買うのではなく。商品から得られるベネフィットがあるから購入します。

皆さんのような生活衛生業は、物品を販売するのではないので、なかなかベネフィットをお客さんに伝えにくいのですが、だからこそ、お客さんのベネフィットを考え抜いて、お客様に伝える努力をすることが大事です。例えば、飲食店であれば、美味しいは当たり前なのでベネフィットではありません。美味しい以外のベネフィットを探してください。例えば、ある人は、友人との会食のお店を選ぶときには、美味しいだけではなく、こんなお店を知ってるよとの優越感でお店をチョイスしています。例えば、久しぶりに友人が会いに来たなら、ゆっくり話せるお店を選ぶ、逆に忙しいサラリーマンなら早く食事が出て来る店選ぶと考えられます。

味噌汁の「しじみ70個分のちから」にはパッケージの右側に「お酒好きのお父さんにおもいやりのみそ汁」と書いてあります。これがこの味噌汁のベネフィットです。発売当初は、書いていませんでした。最初は「ししみ70個分の力、発酵オルニチン25mg」などです。商品規格をPRしただけでした。お客さんは、読んでも「だからなんなの?」とメリットがわらなかった。今でこそ、二日酔いにしじみがいいとわかっていますが、発売当初はわかりませんでした。そこで、永谷園では、「お酒好きのお父さんにおもいやりのみそ汁」の1文を追加しました。追加しただけで、売り上げが7倍になりました。

次に紹介するのは、私が旅行会社に勤めていたときの事例です。京都への旅行ですが、お客さんが行くのは春と秋であり、5月、7月、12月とかには京都には行きません。旅行会社では、4月と11月の京都のホテル確保をすることが難しい状況でした。秋の京都旅行の企画を立てて「秋の京都 嵯峨野トロッコ列車と亀岡温泉」(79,800円)のツアーを販売していましたが全然売れませんでした。そこで翌年は料金を1万円下げましたが、それでも売れませんでした。また、翌年料金を1万円下げました。これは赤字覚悟でしたが、それでも11月11日出発分以外売れませんでした。そのあと、私が京都の担当になりました。旅行の行程、ホテル、昼食などの内容は全く同じで、料金は99,800円にしました。この旅行は2日で完売しました。私の行ったことは、ツアータイトルを「一番美しい秋を見つける感動の京都旅」としただけでした。旅行の内容は変わってはいません。以前のツアータイトルでは、旅行の良さがお客さんに伝わっていなかった。「一番美しい秋を見つけましょう」としただけでお客さんはものすごく美しい紅葉が見られると思ったんですね。当時、私はベネフィットという言葉は知りませんでしたが、なぜ売れたのかをいま考えると、この商品のベネフィットがお客さんに通じたのだと思います。

繁盛への道 その5

顧客が来ない理由をつぶしていくことです。

店にお客さんが来ないのは理由があるので、これを見つけてつぶしていくことです。 お客さんが皆さんのお店を知って、常連客になるまでには、いろんな階段を登っています。その階段のどこか1か所でつまずくとそれより先に進ないので、常連さんにはなりません。どのような階段があるかは、スライドに示しました。このスライドに示したのは一般的な考え方のものなので、どのような業種でも使えます。この階段を自分の業界に合うように調整して自分のお店用の階段を考えてください。

まず、第1段階は認知の階段です。お店を知ってもらうことです。次に知っているが行ったことはないには、興味を持ってもらうことです。2つ目は興味の階段を上らせるです。知っているし興味もあるが、まだ行かないお店は、行動の階段を登らせなければなりません。お店に行きにくいところはないか?例えば、駐車場がない、お店の重厚なドアで閉まったままで入りにくいとか、看板が出ていないなどはないか。行動しにくい階段をなくしたら、次の階段が比較の階段です。他の店に比較で負けていないか、比較の階段を登らせなければいけません。この階段を登ると来店に繋がります。次は購買の階段になります。小売店などでは、お店に人が来たが、物を買わないということがあります。物を買って満足しないと常連客にはなりません。次は利用しやすさです。利用の階段を登らせて、はじめて常連客になります。 重要なのは、この階段の順番です。

千葉県のある靴屋の例ですが、 高齢者向けの靴屋でデパートの一階に店舗があります。一階なので、店舗の前をたくさんの高齢者が歩いていますが、お客さんが来ない状況でした。店員さんは、どうすればいいのか考えていました。この方はこの階段のことを知っていたので、興味の階段が問題だと思い、興味の階段を下げるため商品に興味を引くようなポップ、例えば、「つまずきにくい靴です」とか「歩きやすい靴はこちらです」とかのポップを作り、掲示しました。しかし、お客さんは入らず、売上は上がりませんでした。普通であれば、お手上げなのですが、この店員さんは、この階段の順番も知っていたので、お客さんは興味の階段の前の認知の階段で引っかかっていると気が付きました。普通は気づかないことです。お店はデパートの一階にあるので、まさか知られていないとは思わないでしょう。  そこで店員さんがお客を観察したところ、高齢者の方は、つまずかないように下ばかり見て歩いていて、お店に気づいていないことがわかったのです。やはり認知が問題だとわかり、対策として、床に店に誘導する矢印や履きやすい靴ありますと広告を書きました。これで沢山のお客さんが来るようになりました。これは、階段の順番を知らなければ、できなかったことです。皆さんも自分のお店では、どこの階段が一番高くなっていて、どこでお客さんが一番つまずいているのか、探してみてください。そこの階段を下げることに集中してください。中小企業では、お金や人、時間が限られるので、すべての階段を下げることはできません。

次のスライドは、私が飲食店用にちょっと変えたマインドフローですので、飲食店の方は参考にしてください。

実際の飲食店の事例

平取町の飲食店事例

ここは元々何の特徴もない定食屋さんでしたが、コンセプトを明確にしたメニューを作りました。地元、平取産のトマトと黒豚を使った「ニシパの恋人ランチ」を開発したのです。とんがることができたので、札幌など他の地方からお客さんが来るようになりました。これはコンセプトを絞って、成功した事例です。

ここのお店の失敗の事例もあります。ニシパの恋人ランチには黒豚ステーキを出していましたが、ステーキの歩留まりが悪く、端材がでます。そこで、歩留まりが良くなってお店の経営にはいいだろうと思ってメンチカツを作りました。ところが、他のメニューより安いメンチカツばかり注文されるようになり、売上が下がりました。経費削減を考えて行ったのですが、売上は下がってしまった事例です。

皆さんも売上を考えるときには、注意が必要だと思います。

札幌市内の洋食屋の事例

ここの洋食屋さんのシェフは、非常に優秀な方で、有名レストランで修行を積んで独立して飲食店を開業しました。大変美味しいのに大変安いお店です。しかし、利益が出ず、赤字でした。何故かというと、原価率が高すぎでした。ランチセットを1500円、ディナーは2,600円で提供していました。観察してみると、お客さんはみんなランチセットを頼み、他の単品を全く注文しないのです。原価50%のランチセットだけを注文されると、どう頑張っても黒字にはなりません。

そこで注文点数のアップを勧めました。単品のメニューはたくさんあるのに注文が全く入らないので、単品の名前をスライドに示したようにお客さんの興味を引くような名前に変え、テーブルの上にその商品の紹介をポップで置くようにしました。それだけで、お客さんの興味を引き、ランチにプラスしてコロッケとかポテトサラダとかの単品の注文が入るようになりました。ポップを作ったことで黒字になりました。 他に利用頻度の向上のチラシも行いましたが、やはり効果のあったのは注文点数を増やすことでした。このようにもう1品追加で買ってもらうにはどうすればいいのかを考えれば赤字を黒字に変えることができます。

焼き肉屋の売り上げV字回復

これは前に見ていただいた焼き肉屋の例です。

まず、売上5原則を徹底して考えました。どうやって売上を上げますかを店主さんに聞いたところ、「もうアイデアはない、今までいろいろやったが、だめだった」とのことでした。そこで、売上5原則で5つに分解して考えましょうとアドバイスをしましたところ、多くのアイデアが出てきました。私のアイデアもありますが、ほとんどは店主さんが出したアイデアです。

特に注文点数の増加がこのお店では大きかったです。めずらしいデザートのシーベリーシャベットを出しました。酸っぱいが栄養値が高い果物があって、そのシャーベットを先ほどお話したポップで宣伝しました。そうするとお客の大半の方が焼肉の終わりにこのデザートを注文してくれて、利益が上がりました。

メニュー表も変えました。最初のメニュー表は文字と価格だけであり、これだと注文したら、お客さんは、メニューを閉じてしまい、食事中に見ることもなく追加注文が入りません。そこで写真とこだわりのポイントを書いたら、お客様に興味をもって見ていただき、これも食べたいと思われて、注文する点数が増えました。

それとメニュー表を変えると同時に価格も高くしました。見栄えのいいメニュー表に変えたときに少しぐらい価格が高くなってもお客さんは気にせず、注文は減りません。現行のメニュー表の上に訂正で新価格を書くと、お客さんは、「なんだ高くしたのか」となり、お客離れが起きます。新メニュー表で少し値上げしても、このお店には影響はなく、お店にとってはものすごく利益がでました。

最後に本日お伝えしたいこと

  1. ます、売上を上げるには、売上を5つに分解して考えましょう。
  2. ベネフィットが顧客に伝わると売れること
  3. お客さんがあなたのお店を知って常連になるまでには、いろんな階段があるって、その階段を下げる努力をしてください。

ご清聴ありがとうございました。

平成30年11月に実施しましたセミナーの様子

開会の挨拶 生衛業支援セミナー実行委員長 河口 勝仁 様

開会の挨拶 公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター理事長 小池 広昭 様

会場風景

生衛業支援セミナー配布資料 全体

第1部 過去の失敗事例から考えるお店の衛生管理  牧野 壮一 氏

牧野講師資料 パワーポイント

牧野講師資料 パワーポイント

第2部 売上アップ、顧客獲得のノウハウ  髙田 雅文 氏

髙田講師資料 (左:パワーポイント、右:講義テキスト)

髙田講師資料 パワーポイント資料

髙田講師資料 講義テキスト

髙田講師資料 講義テキスト

平成30年11月に実施しましたセミナー参加者によるアンケート結果

当日参加いただきましたお客様によるアンケートの集計結果です。

アンケート対象者43名、アンケート回答37名

人数
女性 8
男性 28
記載なし 1
37

男女別・年代別回答者数

年代 20代 30代 40代 50代 60代 70代以上 記載なし
男性 1 1 5 4 7 10 0 28
女性 1 3 1 1 1 1 0 8
記載なし 0 0 0 0 0 0 1 1
2 4 6 52 8 11 1 37

セミナーの評価

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
セミナー全体の評価 11 24 2 0 0 0

〇 集計結果のまとめ

・ セミナー全体に対しては、「大変参考になった」及び「参考になった」を合わせ35名(95%)から良い評価を受けた。 「あまり参考にならなかった」と「参考にならなかった」はゼロであった。

第 1 部 の 評 価

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
お店の衛生管理 牧野  壮一 氏 9 23 3 0 0 2

・ 第1部 お店の衛生管理については、、「大変参考になった」及び「参考になった」を合わせ32名(86%)から良い評価を受けた。 「あまり参考にならなかった」と「参考にならなかった」はゼロであった。

講義時間について

ちょうど良い 長い 短い 無回答
17 5 1 14

・ 講習時間については、「ちょうど良い」が17名(46%)、「長い」が5名(14%)、「短い」が1名、「無回答」が14名(38%)であった。 無回答の中にはアンケートに回答した第2部からの参加者が含まれると思われる。

第 2 部 の 評 価

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
売上アップ、顧客獲得 髙田 雅文 氏 13 11 3 1 0 9

・ 第2部 収益力アップ、顧客獲得については、、「大変参考になった」及び「参考になった」を合わせ24名(65%)から良い評価を受けた。「あまり参考にならなかった」は1名、「参考にならなかった」はゼロであった。無回答が多いのは、1部のみの参加者がいることによると思われる。

講義時間について

ちょうど良い 長い 短い 無回答
18 1 0 18

・ 講習時間については、「ちょうど良い」が18名(49%)、「長い」が1名、「短い」はゼロ、「無回答」が18名であった。無回答の中には、第1部のみの参加者のアンケートが含まれると思られる。

生衛業支援セミナーアンケートご感想、ご意見の記載一覧

当日参加されましたお客様よりいただきましたご感想、ご意見を下記に記載しております。

  1. HACCPは、既に取組んでいますが、記録の部分が大変と現場から聞いています。しかし、食の安全・安心を提供する改めて大事なことだと再認できました。【女性、20代】
  2. お店の衛生管理:もう少しハサップの取組方を知りたかった。売上アップ、顧客獲得のノウハウ:例があり、わかりやすかった。今度はホテル・旅館の例もあれば、うれしいです。【男性、60代】
  3. 第1部:米国のHACCPの考えなどをご紹介いただき、とても参考になりました。HACCPは性悪説に立った制度であると聞き、日本で導入が進まない理由の1つなのかと思いました。第2部:営業者ではないですが、自分の仕事に役立つ考え方を学べたと思  います。【女性、30代】
  4. お店の衛生管理:具体的に説明があり、わかりやすかった。マニュアルを作り記録することが大切だと感じた。【女性、50代】
  5. 衛生管理の講演はメリハリがなく、途中集中力がきれました。ただ話している内容は、とても参考になりました。売上げアップの講演はわかりやすく聞き取りやすい話し方で、ずっと聞き入ってしまい、とても参考になりました。ありがとうございます。【女性、30代】
  6. 特にないです。もう少し専門的な話がよかったです。【男性、60代】
  7. 説明がわかりやすかった。【男性、60代】
  8. HACCPが義務化になったという事、顧客マインドフロ―分析が参考になりました、ありがとうございます。【男性、50代】
  9. 仕事に役立つ内容でした。【男性、30代】
  10. 私の組合にとっては直接かかわるセミナーテーマではなかったが、個人的には興味深い講義であった。特に売上アップ、顧客獲得。【男性、60代】
  11. 十分参考になった。【男性、70代以上】
  12. 2人は長い【男性、50代】

セミナー終了後の12月5日に届いたメール

今後、HACCPの義務化を見据え、〇〇HACCPの参考とさせて頂きます。 ( 〇〇には企業名が記載されておりましたので、○○といたしました。)