セミナー開会のご挨拶

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター 副理事長 橋本 毅

公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター 副理事長 橋本 毅

生衛業支援セミナー開会の挨拶(要旨)

 北海道生活衛生営業指導センターの副理事長をしております橋本と申します。開会にあたり一言ご挨拶を申し上げさせていただきたいと存じます。

 本日は、ご多用の中、それから北海道の新型コロナウイルス警戒レベルが昨日レベル2に上がり、なかなか外出自粛のイメージがある中にも拘わらずご参加いただいておりますことに心より感謝申し上げたいと存じます。

 また、本セミナーは、北海道からの助成金をいただいて開催しております。関係各位の皆様方にも改めてお礼を申し上げます。

 本日、初めて当団体のセミナーに参加された方もいらっしゃると思いますので、少しだけ当団体の紹介をさせていただきたいと思います。私ども指導センターは、生衛業の方々の衛生の確保、それから経営の健全化を通じて道民の皆様のより良い生活の営みに寄与して行くことを目的としている団体でありますので、この機会に是非お見知り置きいただければと思います。

 さて、新型コロナウイルスの感染拡大により我々生衛業が受けている影響の大きさは、今更申し上げるまでもございませんが、皆様におかれましても日々の営業にあたり従業員の健康管理やお客様に対する感染防止対策を確実に実行して行かねばならず、この状況がいったい、いつまで続くのかと悩まれていることと思います。

 広い大きい視点で見れば、我が国の経済状況が従前の状況まで戻るには数年を要すると言われております。我々には、これまで以上の努力が必要かと思います。そのような中、今回は6つの生衛組合の事務局長様、専務理事様に実行委員になっていただき、新型コロナウイルスの影響に耐えている経営者の皆様の一助となればと本セミナーを企画し、開催したところでございます。

 本日のセミナーは、新型コロナウイルス感染症に関する講演を北海道医療大学の感染症対策の専門家の原先生にお願いしております。先ほど控室で原先生と色々お話をさせていただき、全く私が知らないコロナウイルスについてのお話をお聞きしました。大変興味のあるお話であります。本日は新しいことが聞けるかと思いますので、ご期待いただければと思います。

 その後、新型コロナ後の我々生衛業の生存戦略を中小企業診断士の高田先生にお願いしておりますので、最後までお付き合いください。

 最後になりますが、このセミナーが集まりの皆様の経営にとって新型コロナの危機を乗り越えることのできる一助になることをご祈念申し上げ、ご挨拶といたします。本日はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

講 演

第一部「新型コロナウイルス感染症対策(要旨)」講師 北海道医療大学認定看護師研修センター主任教員 原 理加 氏

新型コロナウイルス感染症対策(要旨)
~ウイルスの特徴を理解して、今、私たちができる事~

講師 北海道医療大学認定看護師研修センター主任教員 原 理加 氏

北海道医療大学認定看護師研修センターから参りました原と申します。

先ほど、橋本副理事長さんがお話になりましたように北海道では新型コロナウイルスの感染者が増加しております。そのような中、セミナーの講師として呼んでいただき、生活衛生同業組合の方々に深く感謝いたします。

お集まりの皆様には、ウイズコロナで頑張っていただくに為には本当に正しい知識を持っていただければと思います。

正しい知識を持てば、正しい対策が出来ますので、本日は、正しい知識について皆様にお話出来ればと思います。

本日の研修内容

本日の研修内容ですが、3本柱でお話させていただきます。

1.新型コロナウイルス感染症について 2.基本的な感染対策 3.事業所にて必要な感染対策

新型コロナウイルス感染症について

1 新型コロナウイルス感染症

まずは、新型コロナウイルス感染症についてですが、今、ウイルスの特徴などどんどん新しいことが判明しております。ウイルスがどのような特徴があるのか、どんな対策を取って行かなければならないのか、皆様は色々な事業をなさっている方とお聞きしており、特に今日は、飲食業の方のご出席が多いと聞きましたので、飲食業でどのように感染が広がったのかを追加してお話します。

新型コロナウイルスですが、色々なメディアでCOVID-19とお聞きしていると思います。COVID-19は、CORONA VIRUS DISEASE2019の略称です。人に感染するコロナウイルスは、今まで風邪のウイルス4種類と2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年中東地域で流行した中東呼吸器症候群(MERS)の6種類が知られておりました。

現在、話題となっているCOVID-19というのは12月に中国で流行しはじめまして、その当時は中国武漢からの春節を利用した観光客の方を中心に発症しておりましたが、短期間に全世界に流行が広がりました。

ウイルスの正式名称はサーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)です。ウイルスの構造は2002年に流行したサーズウイルスと類似しております。

このウイルスは、まだまだ解明されていない部分が多くあります。

治療に関してですが、細菌であれば抗生物質が効くのですが、ウイルスには抗生物質は効果がなく、抗ウイルス薬が必要になります。インフルエンザであればタミフル、リレンザ等の薬剤があるのですが、従来、ウイルス疾患には治療薬がなかなか難しい状況です。理由は、ウイルスが変異するためです。ただ、新型コロナウイルスはRNAウイルスでありますので、ウイルスを殺すのではなく増えないようにする薬は、今、色々開発されております。

2 新型コロナウイルスの感染

ウイルスの特徴として人体中である部位で良く増殖する特徴があります。新型コロナウイルスは肺です。肺炎が大きな症状だと言われるのはその為です。また、ウイルスは人体の何処に多く存在するのかというと唾液、鼻水、痰、便の中に多く存在すると言われています。血液中や尿を調べた研究もありますが、少量であるとのことが報告されています。

ウイルスはどこから入るかというと鼻、口、喉です。ウイルスは、レセプターと結合して体内に入り増殖します。人の体の中にあるコロナウイルスと繋がりやすいレセプターは、鼻や目、口の粘膜に多くありますので、そこから侵入し増殖します。肺にもレセプターがあるので、肺で爆発的に増殖し症状を出します。

新型コロナウイルス感染では、糖尿病の方や煙草を吸う方が重症化しやすいと言われています。それは、糖尿病や煙草を吸う方は、肺に新型コロナウイルスと結合するレセプターが多くなっていて、ウイルスが増えやすい状況になっており重症化しやすいのではないかと言われております。

3 新型コロナウイルス感染症の潜伏期間

ウイルス感染症は、感染してすぐに発症するのではなく、症状を出すまで一定の時間が必要と言われております。その期間を潜伏期間と言いますが、新型コロナウイルスでは1日から14日と言われております。

ただ、今までのデータを見ますと感染して発症した方のほとんどは4、5日です。免疫力が弱い人や高齢者等でレセプターの量が少ない人は増殖までに時間がかかります。一般的には1日から14日程度と考えております。

感染者が発生したら、濃厚接触者にはPCR検査を実施しますが、その時に陰性でも接触してから14日間はいつ陽性になるかは分かりません。もしかしたら翌日陽性になるかも知れないし、2日後かも知れませんので、健康観察として14日間は見て行かなければならないというのがこの感染症の特徴です。

他のウイルスと比べて潜伏期間が2週間と長いのがこのウイルス対策の厄介なところです。これまで指導した施設では、2週間他の人と接触しないようにするのが非常に大変なケースもありました。特に介護施設で大部屋に4人おられる場合はその方々をどのようにケアするのか、精神科の病院の場合では部屋から出ないように言っても出て歩くので、どのように対応するのか非常に大変でした。

4 新型コロナウイルスの感染力

感染力はどのくらいかというと1人の感染者が1.4から2.5人に感染を拡大すると言われております。1.4から2.5というのは計算上ですので、2人から3人に感染を拡大させるということです。これは多いか少ないかというと、大体インフルエンザと同じ位だと思ってください。

大体のウイルスは症状が出てからウイルスを排出するのですが、スライドにありますように新型コロナウイルスは症状が出現する2日前くらいからウイルスを排出しますので、何の症状も無くて元気に普通に活動している時からウイルスを排出しており、人に感染させてしまいます。症状が出る前の日が一番ウイルスを排出すると言われております。症状が出てからはウイルスの排出量は徐々に少なくなってきます。大体発症して7日位でウイルスを排出しなくなります。無症状の時からウイルスを排出することが、クラスターを発生させる要因になっています。

症状が出てから対策しても、もう他の人に移しており、なおかつ2週間の潜伏期間の中でぽつぽつと発生が起きます。感染が分かった時には既に広まっているということです。熱が出た1日目に保健所に相談してもすぐにPCR検査とならず、様子を見ましょうと言われます。さらに翌日も熱があり、味覚障害が出て、PCR検査を受けたとしても結果が出るまでに1、2日かかりますので、この時点で発症から4日位経過しています。無症状の時から発症5日くらいまでは、結構な量のウイルスを排出しながら生活していますので、これがこの感染症の特徴であり、感染症対策が難しい要因でもあります。

5 新型コロナウイルの感染症の症状

この図は、ダイヤモンドプリンセス号の感染者の症状等を表したものですが、重要なのは無症状の人が55%いるということです。ダイヤモンドプリンセス号では、感染者、非感染者が乗船しており、すぐに下船させることができませんでした。このような中、船内で感染がどのように拡大したのか、陽性者はどのような症状なのか調べられました。約8割位が軽症以下でした。

6 新型コロナウイルスの症状と経過

症状は、咳、発熱、倦怠感・だるさなどです。図で四角に囲っているところが症状ですが、これらは、インフルエンザや風邪でもある症状なので、分かりにくいですね。特徴的な症状として先ほど肺炎を起こしやすいと話をしましたが、肺が機能しなくなり酸素を取り入れることが出来ず、非常に息苦しさを感じます。この症状はインフルエンザや風邪にはあまり無い症状です。ウイルスが増えやすいのが鼻や口の粘膜であり、ここでウイルスが増えるので味覚障害や嗅覚障害が起きます。コーヒーやカレーの匂い、カレーの辛さを全く感じないという症状があります。味覚障害は発熱から2、3日後に起きるようです。だるさは、今まで経験したことのないようなひどい「だるさ」であり、「インフルエンザのだるさの比ではない」とお話していた患者さんが多くいました。疾患の経過ですが、1週間で症状が良くなるのか、ならないのかが特徴的で、8割の人は大体1週間程度で症状は良くなります。1週間程度で良くならなかった人は重症化して行きます。10日目でも良くならなかった人は一般的に人工呼吸器が必要となってきます。

7 インフルエンザと新型コロナ感染症との違い

インフルエンザと新型コロナウイルスでの初期の症状は非常に似ているため判断が難しいです。スライドにありますように感染の経路は同じであり、基本的対策もほぼ同じです。潜伏期間を見るとインフルエンザは1日から2日ですが、新型コロナは1日から14日と長いです。

ウイルスが排出される期間ですが、インフルエンザでも発症の1日前から排出され、排出のピークは発症後2から3日頃です。新型コロナウイルスは症状の無い時にすでにウイルスを排出しており、症状が出てから少しずつ排出量は減少して行きます。インフルエンザの肺炎では、細菌性肺炎が多く、二次性肺炎と言われるものですが、これには抗生物質が効きます。コロナウイルスの場合は、ウイルス性肺炎になり、非常に治療に難渋します。このため重症の割合もインフルエンザに比べると高いです。致死率ではインフルエンザは0.1%以下ですが、新型コロナウイルスの方が高く3から4%と言われております。

8 重症化しやすい患者背景

今日、ご出席の方は男性が多いですが、新型コロナで重症化しやすいのは、男性です。年齢は高くなるほどリスクになりますし、喫煙歴もそうです。また、末梢動脈疾患、例えば血栓があるとか、呼吸器疾患がある方は肺が痛めつけられているので、リスクが高いと考えます。ウイズコロナ時代には、このような人達を守って行くことと健常者はその人達にウイルスを持ち込まない対策が重要になります。

9 新型コロナウイルスの致死率

新型コロナの致死率ですが、日本は諸外国に比べ低いです。日本では国民皆保険制度があり、日本は諸外国に比べ病院受診が気軽にできることも要因と思われます。今、ヨーロッパでは新型コロナウイルス感染症の拡大で都市封鎖をするような事態になっておりますが、日本はそこまでは、ならないように対策を取っているところです。

日本では、20歳以下の人の発症が増えて来ておりますが、死亡例は無いことや乳幼児の発症が無いことは、先ほどお話しましたレセプターの問題で、乳幼児はレセプターが作られていなくてウイルスが侵入出来ないのではないかと思われます。この点がインフルエンザと大きく違います。インフルエンザの場合は年少者と高齢者の死亡率が高いです。日本では、新型コロナウイルス感染症で20歳以下の死亡者はゼロです。

10 新型コロナウイルス感染後の症状

若い人で無症状が8割なら感染して抗体が出来ればマスクもしないで良いのではと思われる方がおりますが、治療後に後遺症と言われる症状が続く方がおります。症状は大体3か月程度継続すると言われております。スライドに示したのは海外のデータですが、倦怠感、呼吸苦、つまり呼吸が苦しい状態、記憶障害、さらには脱毛などがあります。以外に体へのダメージが強いです。

抗体についてですが、ウイルス疾患の場合に一度感染したら二度は感染しない。例えば、インフルエンザでは一度感染したら、その季には感染しないのですが、この新型コロナウイルス感染の抗体は2か月程度しか効果が無いのではと思われます。ヨーロッパでは、一度感染し回復しても3か月後にまた新たに感染した例もあります。

11 新型コロナウイルスの環境中での寿命

先ほど申しましたがウイルスは人の体の中でしか増えることができません。

体の外に排出したウイルスは、空気中では3時間ほどしか生きられません。以外に短いです。換気して出してしまえば部屋には残りません。部屋に人がいっぱい入った後は、換気をすると良いです。

スライドには、銅の表面で4時間とあります。銅は10円玉だと思ってください。ボール紙のようなザラザラした表面では24時間ほどです。つるつるしたステンレスやプラスチックの表面では大体72時間ほどです。

皮膚からは、感染しませんが、皮膚表面についた場合は9時間くらい存在します。

皮膚についたウイルスは80%のエタノールで完全に感染性が失われます。

基本的な感染対策

12 新型コロナウイルスの感染経路と日々の感染予防

感染経路は3つあります。一つは、エアロゾル化したものを吸うことによる感染です。WHOでは、この経路は否定出来ないと発表しています。これの対策としては換気扇による強制的な換気、30分毎に5分程度の換気が有効です。

以前は、1時間に10分間と言われていましたが、今の北海道でこれを行うとすごく寒いです。大学でも換気を推奨しておりますが、1時間に10分間では寒いので30分に5分間行っております。

便からもウイルスが排出されていると言われており、トイレの蓋を閉めてから流しましょうと言われております。

感染経路として多いと思われるのは、飛沫感染です。咳、くしゃみ等と一緒に放出されたウイルスが目、鼻、口に付着し感染します。

会話では約1メートル、咳なら2から3メートルくらいです。咳をすることを考慮し、間隔を2メートル程度開けましょうとしています。この飛沫による感染を防ぐためマスク、目を守るためフェイスシールドをしましょうと言われております。あとは、パーテーションとしてアクリル板などを置きましょうと言われております。これらは、目、口、鼻に入らないようにする対策です。

次には、接触感染です。スライドに示したように直接的な感染と感染者が触ったベッドの手摺等、エレベーターのボタン、ドアの取手などを触ることによる感染です。

皮膚に付着しただけでは感染しません。目や鼻をさわったり、口の周りをさわらなければ感染しません。接触したと思われるところの消毒、手を洗うことや手指の消毒などが対策となります。ただし、よく見る対策で手袋をしっぱなしでお金を触れば、商品も触るなどしていますが、これはどうでしょうか?

手袋をしないで、何かに触れたらその都度、手を洗う、消毒する方が良いのではないでしょうか。皆様のお店では、どのようにしているのか考えてみてください。どこからどう感染するのかが分かれば、色んな物を拭く時や他の人が触った物を拭く時に手袋をして作業するのは有効ですが、ただし、手袋していればどこを触っても大丈夫ということではありません。

13 新型コロナウイルス感染症感染対策のポイント

感染対策としては、ウイルスを含んだ飛沫が目や鼻、口の粘膜から入るのを防ぐこととウイルスが付着した手で自分の目、鼻、口などにさわらないことで、他の人にも同様です。必要な場面ではマスクを着用し、手指の消毒をすることです。

14 新型コロナウイルス感染症対策で大切な事

感染症対策で大切なことの一つは距離を確保することです。これは飛沫を吸い込まない為です。換気が悪い空間や密集した空間では、ウイルスを吸い込むことがあります。3密を避けるようにするはこの為です。

次に手洗いを心がけること、よく触れるところや共用する物は消毒すること、そしてマスクをすることです。

15 ちょっとプチ情報

すすきの地区のPCRセンターの7月から8月のアンケート調査結果ですが、換気の良いところと悪いところで働いている人を比べるとやはり換気の悪いところの方の方が陽性者は多いです。換気に注意しましょうということです。

16 ソーシャルディスタンスで感染伝搬を防ぐことができた事例

スライドは、高齢者介護施設で職員を含めて30人ほど陽性者が出た施設の食事の場面を示しています。介護施設では、食堂に入居者を集めてお食事をしてもらい、介助することが多いです。この施設では、新型コロナの流行を聞いてから、食事は2部制としてグループAとBに分け、座席の間隔を開けていました。

パーテーションは置いていませんが、対面を避けて斜めに座るようにしていました。図で示した黒い点が陽性者です。陽性者は発症前からウイルスを排出していました。マスクを外して食事をするわけですが、対面していた人には新型コロナウイルスは移っていないのです。1組だけ感染していましたが、これは、仲の良い友人同士で部屋の行き来があったので、食事以外での感染と考えられました。このデータから食事を対面で行わないことの有効性がわかるかと思います。

新型コロナウイルス感染対策の基本/span>

17 手指消毒の方法

手指の消毒方法は、スライドに示したとおりです。指先、爪、親指などイラストで示した部分に注意してください。

18 マスクの装着、マスクの効果

マスクの効果を紹介します。動物実験の結果ですが、感染者と非感染者の両方がマスクをしないと70%程度感染してしまいます。感染者がマスクをせず、非感染者がマスクをしている場合、つまり防護としてのマスクの効果は30%くらいです。逆に感染者がマスクをして、非感染者がマスクをしていない場合は大体15%程度感染します。スライドにはありませんが、両者ともにマスクをしていた場合は5%位です。ですから両者マスクをしていれば感染を阻止できると思われます。専門家がマスクをしましょうと言うのは、現在のところ、飛沫を飛ばさないことと飛沫を吸い込まない対策が重要だからです。もう一つの効果として、マスクをしていると、どうやら重症化も防げるようです。マスクにより感染するウイルス量が少なくなり重症化しないと思われます。

19 「すすきの」の調査によるマスクの効果

この調査は少し前、7月、8月のクラスターの調査ですが、マスクをしていた場合の陽性率は低かったです。接客中、更衣室、控室でマスクを常にしていた人は陰性であった割合が高いです。

20 マスクには色々な種類が・・

マスクには色々なマスクがあります。マスクは密着して付けることが重要です。ウイルスに対して一番効果のあるマスクはN95マスクです。このマスクは密着して付けていると少々息苦しいです。一般的にはサージカルマスクが推奨されています。3層構造となっており、ウイルスの透過性が低いと言われております。布マスクは、唾を吐き出さないという点では効果があります。

21 フェイスシールド・マウスシールドはマスク代わりになるか

フェイスシールドやマウスシールドについてですが、スライドにスーパーコンピューターの解析を示しました。フェイスシールドは、本来、目を守るためのものです。口までおおわれており、顔の表情が見えるので良いのかなと思われて使用されているようですが、飛沫が出るとフェイスシールドにあたり、大きな飛沫は阻止できますが、細かいものは下と側面から漏れ出ます。マウスシールドでは、上から漏れ出ます。結局、唾を外に出さないようにする効果はありますが、新型コロナウイルスの対策としては有効では無いと考えます。

22 クラスターの3つの共通点

クラスターの3つの共通点は、1密閉・密集・密接、2大声、3不十分な感染対策と言われております。

23 クラスターの発生はどのように??

カラオケ店の例ですが、マイクロ飛沫が飛んだり、マイクの使用、お酒を飲んで声も大きくなったり、防音のため窓も気密性が高いなどのクラスター発生の要因があります。スポーツジムでは着替えの時のマスクを外しての会話などが要因となっています。

24 施設内清掃場所、清掃時の注意

コロナ対策には、こまめな清掃が重要です。通常の界面活性剤入りの洗剤で汚れを落として、アルコール60%程度で消毒することです。よく噴霧しているのを見ますが、アルコールが気散し、それを吸い込むので体に良くないこと、塩素も吸い込んでは良くないことと効果が十分でないことがあります。何故、十分でないかと言うと噴霧が均一ではなく、薬剤が十分にかかっている部分とそうでない部分があります。布や紙に十分薬剤を浸み込ませて拭くのが有効です。

事業所にて必要な感染対策

25 健康管理と感染対策

従業員の健康管理と休める環境を作ってあげてください。クラスターの調査で、「休みたかったけれど、皆に迷惑がかかるので、休めませんでした」とか「前の日に熱があったが、解熱剤を飲んだら次の日には熱が下がっていたので、出勤しました」などの話を聞きます。前日に熱があった場合は24時間熱が無いことを確認してから出勤するとか、熱が出た時や体調が悪い時には速やかに連絡してお休みできる体制などをお願いします。また、出勤時や勤務中は必ずマスクを着用し更衣室等でも可能な限りマスクを着用する。着用していない時には会話を避けることです。事業所では休める環境づくりが重要だと思います。

26 職員間の伝播防止の新ルール

更衣室内で「今日はこうだったよね」とか話をしがちなのですが、会話を避けるようにすることや更衣室などには消毒薬を置いておくことです。人が集まるところでは換気です。ただ、換気をしなさいではなく、いつ誰がどうやってやるのかを決めておくことが必要です。

27 食事・おやつの場面

食事の時にはリスクが高いので、間隔を取るとか対面は避けるとかの対策が重要です。

28事例から考える感染症例と接客業における対策

パーテーションはどうあれば良いのかですが、厚労省では、座った場合には高さ1メートル以上としています。その理由は、先ほど目、鼻、口を守るようにとお話をしましたが、パーテーションには目、鼻、口を守れる高さが必要です。よくあるのが、鼻が出てしまうような高さのものです。座席を離すならテーブルの端と端で1メートル以上を保てるようにすることが大切です。このスライドを見て、このパーテーションは何の為かな?と思いませんか。飛沫対策を考えるなら、ここは人が通るだけなので、パーテーションはいらない。ここのグループと隣のグループを分ける為なら、ここのテーブルの間隔は1メートル以上空いておりパーテーションは必要ないと思います。ここでは、パーテーションを十字に置いてありますが、この人とこの人は食事の前だとパーテーションの無いところで話をすることとなります。それならば、このパーテーションは要りません。それならば、最初から椅子を1メートル離せば良いのです。あとは、ここに椅子を置かないことです。本当に何の為に何を置くかを考えた方が良いです。

29 一般的な対策と集団感染の例

ここは、レストランでこのようなテーブル配置です。

感染者がここに居て、向いの方2名が感染した例です。距離は1メートルほどで、マスクなしで数時間会話して、向いに座っていて感染した事例です。隣のテーブルで食事をしていた方には感染していませんでした。

次はカウンターで感染の事例です。

このお店にはボックス席もありますが、ボックス席の方には誰も感染していません。ここに居た人が発症者で、一つ空けて隣の人と従業員が感染しました。カウンターは、隣の人とは腕が擦れ合うくらいの距離で、マスクはしていませんでした。同じカウンターにいた3人と従業員が感染しました。この人が何故感染しなかったのか考えますとこのカウンターは直角ではなくて、鈍角になっており少し距離があったのではないかと思います。では、この人が感染して、この人が感染しなかったのは何故か考えますと、ここでのポイントは従業員が感染したことで、多分、従業員が発症者の接客をして何か接触したあと、手を綺麗にしないで、例えば飲み物などをこの人に渡したのではないかと思われます。あと、カウンター越し人には感染はしていませんでした。カウンターの中と外の席とは2メートル程度離れていました。

次の例は、食事に行ったお母さんとお子さんと甥っ子さんが感染した事例です。

お母さんの横にお子さん、お母さんに対面に甥っ子さんが座っていました。お母さんは甥っ子さんに自分の箸で料理を取ってあげていたそうです。対面に座ったことと箸を介した感染と思われました。

30 一般的な会食などの場での感染対策

一般的にお店での感染は、お店の中に誰か感染者が居たとしても同席か近い距離で食事をしていなければ、あまりリスクではないと考えます。飲食中の会話、共有の箸はリスクになります。また、グループの距離も重要です。注文する時や会計時、食後の会話ではマスクを着用すればリスクは減ります。従業員の方には接客時にはマスクを着用することと接客後には手指を消毒すれば自分を守れることとウイルスが室内の残っていることを考え換気すること、換気扇を回すなどの対応を説明してください。

31 正しい知識で正しくおそれる

人と接触する職業では、感染症が拡大しやすいですし、特にお客様相手ですとお客様がどんな人なのか、どこで誰と接触した人なのか分からないので、ウイルスの特徴とか必要な対策を理解して、自分自身と職員と利用する方をどうすれば守れるかを考え日々実践することが大切だと思います。

色々な業種で色々なマニュアルが作成されていることを今回私も学びました。

ご清聴ありがとうございました。

講師紹介

原理加先生をご紹介いたします。

 先生は、北海道医療大学看護福祉学研究科博士課程前期修了をされており、資格は、看護学校教員資格、感染管理認定看護師、大学院終了後に資格試験にて取得できる資格である感染症看護専門看護師を取得されております。

釧路にて看護師として勤務、その後、看護学校教員、看護管理者、感染管理者を歴任され、今年4月に北海道医療大学に勤務されております。

遠軽町での在職中には、新型コロナウイルス感染患者の受け入れ体制整備をされ、病院の専門外来の開設、北見のクラスター発生時には患者の入院の受け入れ、さらには北見保健所に出向しクラスター対策を支援されておられます。

この4月に大学に勤務されてからは、千歳市や札幌市、遠軽町の病院などのクラスター発生施設への感染対策支援に行かれております。

さらには、コロナ感染者の隔離のための宿泊施設での看護にあたる看護師さんに対する指導、介護施設や障碍者施設、老人保健施設での感染症対策研修会、養護教員の研修会などを行っております。今年5月には2度ほど北海道新聞で「新型コロナウイルス感染症対策」についての記事が掲載されております。

5月10日の北海道新聞には「目鼻口からウイルスを防ぐには感染症専門看護師 原さんに聞く」という特集記事が掲載されております。また、北海道保健福祉部が監修しました新型コロナウイルス感染症対策研修の動画作成にも協力しておられます。

第二部「コロナ後に生き残る生存戦略セミナー(要旨)」講師 たかまさ経営総研 代表取締役 髙田 雅文 氏

コロナ後に生き残る生存戦略セミナー(要旨)

講師 たかまさ経営総研 代表取締役 髙田 雅文 氏

普段、中小企業診断士として、様々の方の経営の相談に乗っていますが、本当にコロナ禍の経営に皆さん苦しんでいます。今の経営は生き残りを考え、なんとか生き残って行かなければならないということをひしひしと感じております。本当に生き残って行かなければならないということを経営者として真剣に考えていただきたいと思います。

1 新型コロナウイルスの現状

日本の現状ですが、お手元の資料は、1週間前までのデータです。

9月にセミナーのお話が来ましたので、新型コロナは治まって来そうだなと思って資料を作り始めたのです。その後、陽性者は増えて行き、特に最近の1週間はぐぐっと増加傾向が強まっています。世界のコロナウイルス感染の状況を見ますとずっと右肩上がりで感染者が増えております

特に直近の1週間の上昇が凄まじい状態です。まだまだ治まるのは難しい状態です。一番陽性者が多いのが米国ですしインドでも勢いが止まらず、最近ではヨーロッパが物凄く増えております。

2 新型コロナが経営にもたらした影響

新型コロナウイルスが経営にもたらした影響ですが、スライドは帝国データバンクが発表した倒産件数です。

お手元の資料は9月の時点のデータですが、直近の新型コロナウイルス関連倒産数は661件となっております。特にこれから年末にかけてキャッシュが出ていくことが多いので12月になると倒産件数は増えます。本当にこれからが経営者の皆さんの踏ん張りどころではないかと思います。どういう業種が非常に厳しいのかは業種別の倒産件数を見て頂くとお分かりのとおり、一番厳しかったのは飲食店です。

4月に第一波が来た時に結構ダメージを受けました。最近でも飲食店では厳しい状況が続いております。その次は、ホテル旅館業、アパレル小売業、建設・工事業となっています。どの業界も厳しい状況です。

生活衛生関係だけに絞って見ますと日本政策金融公庫が景況感についてのアンケートを取っており、スライドに示した折れ線グラフの結果になっております。

コロナ前まではプラスマイナスゼロより下のところを上下しながら動いて来たのですが、コロナ発生後は、がくんと下がっております。落ちた後は点線が上昇しておりますが、おそらく当時はコロナも少し落ち着いてきたところが見られていたので、経営者の方々は、景気はすぐ戻るであろうと予測しアンケートに回答したのでしょう。実際は、このようなV字回復はしていないはずで、これからも厳しい状況は続くと思います。

次にコロナ不況のパターンには色々なパターンがあります。

こちらは、中小企業診断士会で発行している冊子に掲載されていたものです。観光客激減型、自粛要請型、イベント中止型などなどあります。色分けは私がしました。色は信号の赤、青、黄色だと思ってください。

赤は非常に厳しい、我慢の限界を超えたのではないかという意味です。次に黄色は自粛要請型と資産維持困難型です。不動産業などでは高い物を手放して高い物は買わない状況です。ここは黄色で、まだ、やり繰りの仕方によっては頑張れる状況です。残りのところは青色ですが、青とは言え厳しいことには変わりはないので、皆さんはどの型に当てはまろうとも何かしら経営の改革はおこなって行かなければならないです。

3 今後どうなっていくのか?

世界的なコロナ大恐慌がこれから訪れる可能性が高いです。コロナの経営に対する影響は、このL、G、Fの順に起こって行くと見られています。

Lはローカル経済圏、地方経済とか皆さんのように住民と密着している経済がまずダメージを受けます。その後、G、グローバル経済圏です。クローバル経済は大企業がほとんどです。海外と取引をしているところは今までは安泰でしたが、海外でのコロナウイルス感染の状況を見ても分かるとおり日本が治まっても海外は治まらないということで、これからは大企業が大打撃を受ける時期に入って来ています。次に第三波で、F、金融機関がダメージを受けると見られています。リーマンショックのときは、最初に銀行がダメージを受けました。銀行がダメージを受けるとどうなるかというとお金を貸してくれない、また、貸しはがしが起きて、借りたいときになかなかお金が借りられないということが起こりました。銀行がダメージを受けた後に再度L、ローカルの不況が訪れます。これが第四波です。このことに注意しながら経営をおこなって行かなければならないと思います。もしコロナのワクチンが出来たとしても、色んな業界に亘って、どんどん悪くなって行く業種・業態が変わっていきます。今後、飲食店など生活衛生業の皆さんが乗り越えたとしても金融機関がダメージを受けた後にお金が借りられなくなる時代が来ることを押さえて、皆さんは経営を考えて頂きたいと思います。

 どのような企業がこれから生き残って行くのかを考えたときに「レスの時代」と「プロの時代」がこれから来ると言われています。

レスとはペーパーレスとか出張レスとかです。今までは色んな物が沢山世の中に溢れていましたが、これからはレスの時代が来ると言われています。コロナの中で「要らないな」というものが分かってきました。一例を上げますと、今、話題のハンコですね。あと、オフィスレスです。今までは東京に一極集中し、東京にオフィスを構えて沢山のビジネスをやろうとしていましたが、会社は要らないのではないか、地方でも仕事ができる時代になって来ました。現金も要らず、キャッシュレス決済になって来ました。皆さんの仕事の中でも「これは無くても良いのでは」と思うことがあると思います。それと同時に「プロの時代」が来ると言われています。今までは事業者が多すぎたというところがあります。これからは専門の方が生き残って行くと言われております。スライドの一番下に「自分を100万分の1の「レアカード化」せよ!」とありますが、これは、奈良市立一条高校校長だった藤原さんが提唱していることです。

何が言いたいかと言うと1個の事業で100万分の1のレアカードに成るのは非常に難しいのですが、3つのことで100分の1のレアカードに成りなさいということです。

ホテル業だからといってホテル業だけではなく、何か違ったことをしなければいけないのではないかと思います。次にコロナで消えるもの、新常識となるものですが、こちらは女性セブンが書いていたものです(スライド15~18)。

読んでみるとこれは違うのではとか当たり前だねとか思うこともあろうかと思います。

これからは確実に人の価値観が変わっていきます。お客さんのニーズ、価値観が変わったら皆さん事業者も考えを変えて行かなければいけません。今までも人口減少、少子高齢化でビジネスが厳しくなるので考えを変えなければならないと言われていましたが、なかなか考えを変えられなかったのではないでしょうか。今回のコロナウイルス感染症では本当に考えを変えないと生き残れないという危機感が強いので、是非、皆さん、どのように顧客ニーズが変わっているのか、また、逆にここは変わらないというところを調べて自分の事業に活かしていただければと思います。

4 生き残るためにこれからの経営をどうして行くのか?

私のセミナーのメインの話の生き残るために何をすれば良いのかを説明したいと思います。生存戦略として何を考えなければならないのかと言いますと3つあります。

順番も大切です。まず、サバイバル戦略です。

まずは、キャッシュを集めなければ生き残れないと思っております。資金繰りを早急に行っていただきたいです。一番だめなのが銀行などからお金を借りて安心して何もしていないケースです。我慢しているだけではだめで、その融資資金がある内に生産性の改革をしなければなりません。先ほど見たようにコロナによる不況が長く続きますので、今の内になるべく固定費を削減してコストがかからないようなお店に改革して行かなければなりません。これが生産性戦略です。最後に成長戦略で、この後の時代にどういった事業が伸びるのかに着目して行くのです。

とにかく皆さんは、サバイバル戦略を最初に行うことと生産性戦略として固定費の削減に着手することです。まず、一つ目のサバイバル戦略ですが、皆さん、日次資金繰り表とかでお金の動きを把握していますか?こう聞くとほとんどの事業者の方は日次資金繰り表までは付けていないと言われます。経営はお金が無くなったときにアウトです。結構、どんぶり勘定の方が多いです。今月の売上が100万円あったら、100万円の現金があると思っていますが、入金は遅れて来ることもありますので現実のお金の動きを捉えることはすごく大事です。お金の動きを捉えるには日次資金繰り表です。毎日、毎日の単位で入金、支払いを把握し、いつキャッシュが尽きるのか、例えば、新型コロナウイルス感染の影響で毎月の売上が対前年比70%減少の状態で続いた場合にどの時点で資金が尽きるのか、日にちを確定してください。その日にちを伸ばすために金融機関から融資を受けることが大切です。スライドに書いていますが、今、無利子無担保の緊急融資が行われています。まだ、キャッシュがあるからしばらくは大丈夫だという方でも無利子無担保であれば、借りるリスクはそれほどありませんので、なるべく借りられる今の内に借りた方が良いです。セーフティネット4号とか危機関連保証などがあり、これは対前年比で20%以上だとか15%以上減少した場合に銀行から借りやすくなる制度です。セーフティネット4号とか危機関連保証は、いつ期限が切れるか分かりません。特にセーフティネット4号は現段階では12月1日で締め切りと言われております。延長されるのではないかとも思いますが、いつ無利子無担保の融資が終わるか分かりませんので借りられるうちに借りた方が良いと思います。

次に生産性戦略です。

生産性戦略は設備過剰、業務過剰、人員過剰のダウンサイジングです。こういったことは、あまりこのようなセミナーでは言えないことなのですが、人員の削減にも手を付けなければならない時代になって来ていると個人的には思います。ただ、最近では解雇ではなく出向させる方法も取られています。特にホテル業など多くの人員を抱えているところは、人手が必要な業界への出向を考えることも必要ではないかと思います。

次にコストを変動費化してみてください。今、固定費が経営にダメージを与えています。家賃と人件費ですが、なるべく売上が無い時にはかからない変動費化する考え方が重要になっています。会社のオフィスもこれからはシェアするという考えがメインになって来ると思います。あと、大事な業務以外は外注にすることなど、コストを見直すことに着手してください。飲食業では人件費のコストが売上の約30%を占め高いのですが、これからは減少させなくてはならないので、ロボット化や無人化が進んで行きます。なかなかロボット化は着手しにくいでしょうが、本気で考えて行く時代が来ていると考えます。

最後に成長戦略です。

融資を受けダウンサイジングも行いコストがかからないようなお店にしたとは言え、これからずっと営業して行くには向かない業種業態があります。ですからこれからのコロナの世の中に生き残って行くような業態へ変更するという抜本的な改革も視野に入れなければならないと思います。最近のニュースになりましたが、居酒屋の和民が焼き肉屋に業態変更します。同じ飲食店ですが、なるべく影響の出ていないものに変える、喫茶店を経営している場合はデリバリーをメインにするなどを考えて行く必要があります。現段階では新型コロナウイルス感染症がどのようになるのか分からないので、すぐに踏み切れないかも知れません。

まずは、キャッシュを最低でも半年分、出来れば1年、2年分用意し、何も無くてももつくらいの形を取って欲しいです。このキャッシュがある内に固定費を削減する努力をして、なるべく固定費がかかりにくい経営にチェンジしてください。

次に生活衛生関係の経営取り組み事例を資料に掲載しました(スライド24~27)。

これは日本政策金融公庫から発表されておりますので、お時間のあるときに関係する業界のところをご覧いただきたいと思います。取り組み内容のところで赤文字にしたところは私が良いなと思ったところで、業態などの変更などに着手した事例です。

次に今、名経営者たちは、どういう風にコロナを捉えて、どう考えて行くのかを説明します。

ホテル事業の星野リゾートの星野社長さんは3月時点で新型コロナウイルス収束までを18か月と予想したそうです。

星野社長は「人は切らない」と言っております。コロナが終わった後に業績を回復させるのは優秀な人材だと言っております。ここに示したのは新型コロナが18か月で収束すると仮定したときの方針ですので、収束が18か月より伸びると思ったら新しい方針を発表すると思います。スライドにあるように星野さんは「この期間に何を犠牲にするのか決める」と明言しています。これまで色々な先行投資で事業を進めているのですが、このような中でやらなくても良いものはすべて凍結して、まずできることに着手しようと言っています。

次に飲食業のタリーズの創始者の松田さんはどのように考えているのかと言いますと「損益分岐点を見直さないといけない」と言っています。私も同感です。何故かと言うと新型コロナによって純粋に来店するお客さんは減少するので、今までのような来客数で経営を考えてはいけないこととお客さんが来てくれたけどソーシャルディスタンスで座席数が減っているので、今までのキャパシティの計算が成り立たず、満席になったとしても以前の半分から6、7割程度なので、それにあった損益分岐点にしなければならないと言っています。ここを皆さんに考えて頂きたいのです。皆さんの業種の黒字化する損益の考え方ですが、例えば、飲食店であれば原価率を3割に抑えるとか、人件費を3割にするとか、家賃は10%までにするとかですが、これは、今までの100%の売上があった時の黒字化できるラインです。100%が70%に減ったときの損益分岐点の計算はどうでしょうか? 今まで家賃は10%で良いと言われていましたが、5%にしなければならないとか、人件費は30%で良いと言われていましたが20%に抑えるとか、原価率はお客さんへの付加価値だから3割は守りたいとか、そういう風に再度、再設計することが大事です。そのような企業が生き残っていけるとタリーズの松田さんは言っております。

次に証券会社の社長の藤野さんですが、面白いこと言っておりますのでご紹介します。「物事に対する判断基準が変わってくる」と言っております。どうしても資本主義経済は損か得かで今まで考えていましたが、そうではなくなり、「ハッピーかハッピーでないかというところに価値基準が変わる」と言っています。皆さんが何を思って頑張って来たのかというとお金が沢山あれば嬉しいとか、良い暮らしができれば嬉しいというところではないでしょうか。コロナの世の中になり、そういう考え方が合わなくなって来ているので資本主義経済が限界に来ているのはないかと思われます。最近、仏教が見直されています。最近、仏教経済学という本があります。お坊さんが経済界のセミナーに呼ばれたりしています。なるべく少ない消費で最大の幸福感を得られるには、どうすればよいのかという経済論が経済界で話題になっています。ここは日本人の強いところだと思います。西洋の人は少ない消費で最大の幸福感というところに考えが至らないのです。我々日本人は昔からそういったところを持ち合わせているので、もし今後、資本主義経済が崩壊して新しい経済、かりに仏教経済のような時代が来た時には日本人はスムーズに移行できて幸せに暮らせるのではないかと思います。

5 国や道の各種経営支援策

お手元に別の資料「北海道の事業者のみなさまへ」を配布しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。

まず、持続化給付金です。

既に取得した方もおられますが、結構、まだ、取得していない生衛業の方が多いです。もし対前年比でひと月でも50%以上売り上げが減少していれば会社であれば最大200万円まで、個人事業であれば100万円まで受け取ることができるので、皆さんには売り上げの計算をしていただきたいです。基本的にはここに示した計算方法ですが、これは青色申告している場合なので白色の場合は対前年の売り上げを12で割った金額を比較して考えます。

いくらもらえるかは、前年の売上-(50%以上減少した月の売上×12)で計算します。先日、このような事例がありました。今までは売上が50%を切ってはいなかったのですが、9月に50%を切ったので申請をしたいとのことでした。お話を聞くと10月の方がもっと売上が落ちてきているようなので、10月分で申請して給付金100万円をいただきました。もし9月分で申請していたら給付金は70数万円でした。その月に休業していた日があっても申請は可能ですので、参考にしてください。

次にこの持続化給付金をいただいた事業者さんは札幌市と道からさらに経営持続化臨時特別支援金が貰えます。

スライドは札幌市の場合を示しています。恵庭市や江別市ではこの5万円があったり、無かったりします。皆さんの所在地の市町村ではどうなっているのか調べていただきたいと思います。この臨時特別支援金を忘れている方が多いので、対象となる方は、是非申し込んでください。

次は雇用調整助成金です。

この制度の情報が何度も変わるので最新の情報を調べて頂きたいのですが、基本的に休業やシフトを減らして雇用の調整をした場合には1日15,000円を限度に助成金が出る制度です。一時期は申請には分厚い資料を作らなければならなかったのですが、今は資料の枚数も少なくなっており、経営者さんが頑張れば資料は作れますので申請してみてください。もし難しかったら社会保険労務士さんに依頼してください。

次は家賃支援給付金です。

こちらもあまり申請している方がいないようです。これまでと条件が変わっていますので最新の情報を見て検討してください。5月から12月まででひと月の売上が前年同月比で50%以上減少、または連続する3か月の売上が前年同月比で30%以上減少した場合には家賃の3分の2掛ける6か月分を支給するものです。

今までこの条件に当てはまらない方でも昨日条件が変更されましたので、当てはまるかも知れません。最新情報をご確認ください。

次に小規模事業者持続化補助金です。

こちらの補助金上限額は50万円から150万円です。よく、コロナ対策のためにアルコールやマスク、フェイスシールド、空気清浄機を買いたいのですが、補助金はありますよねと聞かれます。それはこの小規模事業者持続化補助金の付属で付いてくる補助です。マスクやアルコール消毒液などの購入に対する直接的な助成金や補助金は、ほぼありません。こちらの補助金の申請をすれば上限50万円ですが補助金と同額でマスク、アルコール消毒液、空気清浄機の購入や換気の工事、換気機能付きのエアコンを買うことができます。この補助金は一般型とコロナ型に分かれており金額が違います。

一般型は売上を上げるために行う事業に対する補助金です。コロナ型は補助金100万円ですが、条件が少し厳しくて、サプライチェーンの毀損への対応とか非対面型ビジネスモデルへの転換だとかにしか補助されません。

もし何か買いたい物があった場合には中小企業診断士などに相談してください。申請期限があり、一般型が来年2月初め、コロナ型は12月上旬ですので申請を考えている方は資料の準備をしてください。

次はセーフティネット保証です。

これを知っているのと知らないのでは大きな差が出ます。今まで銀行から借り入れができなかった方でも結構な借り入れができています。セーフティネット保証の4号とか危機関連保証の保証認定を受けると銀行の貸倒れリスクがゼロになります。皆さんが借りたお金を返せなくなった時に銀行と保証協会が一緒になってその責任を負い一緒に損をするのですが、このセーフティネット保証をすれば銀行のリスクがゼロになるので銀行は貸してくれます。ただ、信用保証協会のリスクが跳ね上がるので信用保証協会がダメと判断すれば借りられませんが、私の知っている限りほとんどの会社は信用保証協会からOKが出ています。もちろん減額されることもあり、例えば5,000万円借りたいのが、3,000万円になることもあるそうです。もし皆さんの会社で15%以上売上が減少していれば危機関連保証の認定が受けられます。売上が15%減少までいっていなくても5%以上であればセーフティネット保証5号が受けられます。セーフティネット保証5号でも結構、銀行から借りられています。サバイバル戦略として借りられるときに借りて置いてください。多分、2年か3年後に貸したお金が負債になり銀行が打撃を受けて貸し渋りが起きてきます。この年末にも貸し渋りがはじまるような気配です。

次に専門家派遣制度を紹介させていただきます。こちらは中小企業診断協会北海道が行っている専門家派遣制度です。

コロナで困っていることがあれば2回まで無料で専門家を派遣します。実際にありましたが、パソコンが無いので持続化給付金の申請制度を手伝って欲しいということでも出向きます。何か困っていることがあれば、この専門家派遣制度を利用してプロのアドバイスを受けて欲しいと思います。

最後になりますが、このコロナウイルス感染症は我々の人生を振り返ったときにこのタイミングで時代が変わったと思うような、明治維新張りの出来事だと思います。こういった変化の時には変わりたがらない人が多いです。人間は今まで行って来たことをやり続ける方が良いので、変えたくないと思うのも分かるのですが、是非このチャンスに大きく前に進んでいただきたいと思います(スライド49)。本当に日本は、今まで失われた30年と言われていました。この失われた30年は、色々なしがらみがあって変われなかったのですが、コロナウイルス感染症によって、がらりと変えることができるのです。例えば働き方改革ですが、私は働き方改革センターにおり、以前から企業にテレワークを勧めていましたが、企業からはテレワーク導入はできないと言われておりました。ところがコロナウイルス感染症が発生したら、すぐにテレワークを導入するようになりした。今まで出来なかったことが、今ならできるようになります。特にすごく変わるチャンスでもあります。資本主義経済の損得によって我々は疲弊してきましたが、そうではなく違った価値観で全員が幸せなろうという世の中がきっとありますので、是非皆さん、頑張ってサバイバルしていただきたいです。

本日は、ご清聴ありがとうございました。

講師紹介

髙田 雅文先生をご紹介いたします。

 講演の初めに髙田先生から自己紹介がありますので手短に説明いたします。

先生は、観光業、飲食業の経営改善などに定評がある中小企業診断士さんで す。当指導センターの各種セミナーの講師をお願いしており、セミナーはいつも具体的な事例を紹介していただき、経営者の方から大変好評であります。

特に今年は、当指導センターでは、新型コロナの影響に苦しんでいる中小企業への支援として、専門家の派遣事業を行っております。髙田先生には、札幌市内ほか、むかわ町、江別市、恵庭市、苫小牧市、千歳市に出向いていただき、美容室や寿司屋、喫茶店などのお店を訪問し、各種助成制度の活用や今後の経営のアドバイスをしていただいております。

令和2年10月に実施しましたセミナーの様子

開会の挨拶 公益財団法人北海道生活衛生営業指導センター 副理事長 橋本 毅

第1部講師 原 理加 氏

第1部 原 理加 氏

第1部 原 理加 氏

第2部講師 髙田 雅文 氏

第2部 髙田 雅文 氏

第2部 髙田 雅文 氏

閉会の挨拶 生衛業支援セミナー実行委員会 委員長 遠藤 博 氏

会場風景

会場風景

参加者

参加者

セミナー参加者によるアンケート結果

当日参加いただきましたお客様によるアンケートの集計結果です。

アンケート対象者35名、アンケート回答30名

人数
女性 4
男性 26
30

男女別・年代別回答者数

年代 20代 30代 40代 50代 60代 70代以上 記載なし
男性 1 1 3 7 8 5 1 26
女性 0 0 2 1 1 0 0 4
1 1 5 8 9 5 1 30

セミナー全体の評価

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
セミナー全体の評価 20 7 1 0 0 2

〇 集計結果のまとめ

・セミナー全体に対しては、「大変良かった」と「良かった」を合わせて27名(90%)でから良い評価を受けた。「あまり良くなかった」と「良くなかった」はゼロであった。

第1部 新型コロナウイルス感染症対策の評価(回答者29名)

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
新型コロナウイルス感染症対策 原 理加 氏 17 9 2 1 0 0

第1部については、「大変参考になった」と「参考になった」を合わせて26名(89.7%)から良い評価を受けた。「ふつう」2名、「あまり参考にならなかった」は1名、「参考にならなかった」はゼロであった。

講義時間について

ちょうど良い 長い 短い 無回答
2 20 1 6

講演は、予定時間50分を15分程度超過したが、「ちょうど良い」が20名(69%)であった。

第2部 コロナ後に生き残る生存戦略セミナーの評価(回答者23名)

項目 大変良かった 良かった ふつう あまり良くなかった 良くなかった 無回答
コロナ後に生き残る生存戦略セミナー 髙田 雅文 氏 14 6 3 0 0 0

第2部については、「大変参考になった」と「参考になった」合わせて20名(87.0%)から良い評価を受けた。「あまり参考にならなかった」と「参考にならなかった」はゼロであった。なお、第1部のみの参加者7名、第2部のみの参加者1名であった。

講義時間について

ちょうど良い 長い 短い 無回答
0 14 4 5

講演は、予定時間50分を10程度超過したが、「ちょうど良い」が14名(61.0%)であった。

生衛業支援セミナーアンケートご感想、ご意見の記載一覧

当日参加されましたお客様よりいただきましたご感想、ご意見を下記に記載しております。

  1. 両方とも、このご時世にあった講演内容でした。今後、当社他、鮨商組合の会議でも今日の事を報告したいです。 ①すし店なので飛沫も含めて勉強になりました。 ②これからの経営に対して考え方が大方間違ってなかったのがわかった。これからは、その事を実践していくことが大事と思いました。 (男性)
  2. 第1部 ススキノ感染例など具体的で身近な例をご紹介いただき、参考になった。資料も有益で助かります。 第2部 「コロナ後の生存戦略」として、①サバイバル ②生産性 ③成長 の3戦略が重要だという内容を大変興味深く拝聴した。 レスの時代で、これまでの常識の見直しが迫られていることを痛感! (男性 60代)
  3. 正しい知識で正しくおそれるために情報を聞くことができ、よかったです。 マスク、消毒、ディスタンスに気をつけて営業したいと考えています。 経営のあり方の考え方をかえて、厳しい状況の中、まだ、続くコロナと戦っていくことで新しいやり方を見つけていきたいと思います。(女性 50代)
  4. 第1部のみ拝聴しました。職場での感染対策に生かしていきたいと思います。 (男性 40代)
  5. 新型コロナウイルスの対策すべき基本的な事例が大変参考になった。 コロナ大恐慌になる理屈と日次資金繰り表の必要性が参考になった (男性 60代)
  6. わかりやすい講演で、よく理解できた。 (男性 60代)
  7. あらためて感染対策の必要性を感じました。 (男性 50代)
  8. ①知っていることが多かった。 ②知らなかったこと、これからのこと、参考になることが多かった。 (女性 40代)
  9. 具体的な事例が中心でイメージしやすかった。 補助金などの説明は特に活用できると感じた。 (男性 20代)
  10. 高田先生のお話をもっとお聞きしたかったです。 (女性 60代)
  11. 第2部を主目的に来たが、第1部も「世間で良いと言われていること」の「どうして?」の部分を知ることができ、大変ためになった。 第2部については、自分の考えが概ね間違っていないことがわかり、自信を持つことができた。 (男性 30代)

生衛業支援セミナー閉会の挨拶(要旨)

生衛業支援セミナー実行委員会 委員長 遠藤 博

本日の生衛業支援セミナー実行委員長を務めました社交飲食組合の遠藤でございます。本日は、コロナ禍により大変厳しい環境の中、ご参加をいただき無事に開催することができました。感謝を申しあげます。

公益財団法人 北海道 生活衛生営業指導センター

ご承知の通り新型コロナウイルスの感染拡大の終息が未だ見通せない状況となっている中、本日セミナーは、北海道医療大学の原先生による「新型コロナウイルスの感染症対策、ウイルスの特徴を理解して、今、私達ができる事」、さらには、たかまさ経営総研の髙田代表による「新型コロナ後に生き残る生存戦略セミナー」と題して、まさに現在の危機を乗り切るためのお話をいただきました。

本来であれば、もう少し時間を取って講演いただくところでありますが、新型コロナウイルス対応として、時間を短くしていただきました。

両先生には、参加者を代表いたしましてお礼を申し上げます。

今、私達、生衛業界は新型コロナの影響で未曾有の危機を迎えております。

特に飲食等、観光、各種サービス業では、各組合のガイドラインや新北海道スタイルを遵守し頑張って営業しておりますが、この冬を乗り越え、お正月を迎えることができるのか、心配する経営者の多い状況であります。

今回のセミナーがこの危機を乗り越えるため少しでもお役に立てばと思っております。

最後に本日のセミナーを主催していただいた指導センター事務局の皆様に感謝を申し上げ、実行委員長としての挨拶とさせていただきます。