(1)「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて

北海道経済部ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課ゼロカーボン産業係 主幹 太田 正亮  様

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 本日は, お集まりの各生衛業者の方々とゼロカーボンを推進していくため, このような機会をいただきまして誠にありがとうございます.
 「脱炭素」, 「ゼロカーボン」, 「カーボンニュートラル」と色々な呼称がありますがこれらは全部一緒の意味です. 脱炭素は非常に大きな潮流であり, 日本だけではなく世界も同様に動き始めております. この潮流にいかに乗るかが, 今後の皆さんの事業展開に大きく影響してくるところだと思います.
 本日の内容は4項目からとなりますが, 先ずは「脱炭素を巡る国内外の状況」からお話させていただきます.

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 図に示すとおり気温は上昇し, 1880年から2021年で既に0.81度上昇しています.

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 図では1960年を境に気温の上昇が顕著になったことを示しています. 1960年以前,産業革命の時代は石炭が主流で, これが石油に変わった時代です.
 ここから世界の先進国,日本も含めて1960年から一気に経済成長し, この経済成長の代償が気温上昇を生んでいるということが科学的な研究で証明されています.

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 このまま推移すると地球上の平均気温の上昇は今世紀末までに1.5度から2度を超え, 生態系の維持が非常に困難となりますし, 2021年にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が, 「人間の影響が大気,海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と公表しました.

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 北海道は他の地域と比較して気温の上昇が早いといわれており, この100年間で1.6度ほど上昇しており,札幌は2.5度上昇しております.

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 道内の温室効果ガス排出量はどの様に推移しているかというと, 2013年対比で年々減少を続け, 2020年度は年間5960万トン, 約18%の削減がなされました. ただ, 忘れてはいけないのは,この時期はコロナ禍により経済が停滞し,人流が止まった結果,排出が抑制されたということです. 
 資料に記載ありませんが, 2021年度データでは,コロナが落ち着きはじめ,徐々に経済回復が進んでいたことから, 排出量は前年の5960万トンから6335万トンと大きく増加しました. 

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 北海道の温室効果ガス排出の特徴としては, 全国値と比べて「民生部門」と「運輸部門」が高くなっており,道民一人あたりの排出量は,全国に比べ1.3倍となっています.
 これは, 積雪寒冷という地域特性から, 冬の間の暖房によるエネルギー使用量が多くなることや, 都市間の距離が遠いといった広域分散型の地域であるため, 自動車によるガソリンなどの使用量が多くなるといったことがあげられます. 
 今後, 北海道の脱炭素を進める上で大事なのは化石燃料の消費を少なくすることです.
 このため, 再生可能エネルギーの活用が考えられますが, すべての方々に太陽光パネル設置といっても難しいので, 皆さま方にお願いしたい行動は「省エネ」です.省エネこそが「ゼロカーボンの第一歩」です.
 化石燃料をエネルギー転換するには, 相当の投資を必要としますし, 太陽光エネルギーだけではエネルギーを全て賄うことは非常に難しいことから, 先ずは省エネから取り組みを始めてはいかがでしょうか. 一般的なところで「空調」や「照明」の交換, この他, 電気自動車の選択は難しいかもしれませんが,ハイブリットやPHEVの選択など,北海道の特徴に合わせた省エネが重要となります.

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 国内外におけるゼロカーボンの潮流です. 歴史を少し振り返ってみますと, 1992年に「国連気候変動枠組み条約」が採択され, この条約の目的を達成するために2つの大きな国際的な約束が採択されました. 一つが1997年の京都議定書. これは日本が中心となり国際公約を決定した重要な会議で, もう一つが2015年のパリ協定. これは途上国を含む全ての参加国に, 排出削減の努力を求める枠組みを構築しました. また, 2021年のグラスゴー気候同意では, 世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度以内に抑える努力を追求していくことが盛り込まれました.

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 次に国内の動向ですが,2020年10月に菅総理が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い, 2021年4月には2030年で46%削減を目指し,更に50%の高みに向けて挑戦すると宣言しました.
 道は, 国の宣言より早く2020年3月に鈴木知事が2050年までの実質ゼロ宣言を行い, 2022年3月には中期目標として2013年度比で48%削減を掲げ,これらを踏まえ2023年4月に「北海道地球温暖化防止条例」を改正したところです.

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 「ゼロカーボン北海道とは」ですが, 脱炭素の実現には, 先ほど経済活動が原因だといいましたが, 経済活動を停滞させようといっているわけではなく, 脱炭素を進めながら経済的な活性化も同時に進めることを目指すものです.

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 条例の改正ポイントは, 事業者・道民の責務を条文中に明記し, 「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて一層の排出量の削減や再生可能エネルギー, 森林吸収源の取り組みの推進について規定しました.

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 「ゼロカーボン北海道が目指す姿」として, ゼロカーボンが実現するとともに環境の保全,経済の発展,道民生活の向上が図られた持続可能で活力あふれる北海道を指します. 

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 北海道は全国4分の1を占める森林資源があり, 吸収量として非常に大きなポテンシャルを有しております. 「排出量」と「吸収量」が釣り合うことが「カーボンニュートラル」の意味ですので, 北海道は吸収量が多い分, 削減目標を大きく設定しています.

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 脱炭素は資料記載のとおり, 本日お集まりの様々な生衛業を代表される皆さま方にも密接に関わっております.

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 「ゼロカーボンの取り組みにより期待される効果」については, 先ほど, この潮流に乗ることが重要といいましたが, ゼロカーボンの取り組みを実施する事で, 優位性を持ち, より経済業績の向上を図ることができます. 今後はサプライヤーにも排出削減が求められる傾向になりつつありますので, 自社の競争力の強化, 受注を拡大する上でもゼロカーボンへの取り組みをアピールしていかなければなりません. 
 この他, 新しい若い世代をZ世代といいますが, この世代はSDGs教育をしっかりと受けており, ゼロカーボンにも関心があるといわれています. ゼロカーボンを意識して取り組むことは, 人材獲得の強化,企業成長, 資金調達に極めて大きな影響を及ぼすものとなります.

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 「具体的な脱炭素化の進め方」ですが, 先ずは「現状を把握する」ということです. そして, 「改善していく決意」, 「取り組みの実践」, 「情報発信」, この4段階になります.

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 この観点で具体的にお話をしますと, 「排出算定シート」というものが道庁ホームページにあります.
 これは簡単なシートで, それぞれのエネルギーの使用量を入れるとCO2の排出量が計算でされる仕組みになっています. これを入力することで,わが社のCO2はどれだけ排出されているのかが, 概算で把握できます. これがないと脱炭素は始まらない .まさに,これがはじめの第一歩になります.

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 「ゼロカーボンチャレンジャー宣言」. ゼロカーボンへの取組項目について宣誓していただけますと,道が発注する公共工事における加点評価や金融機関の金利優遇を得ることができます. 
 ゼロカーボンチャレンジャーは決してハードル高くありませんので, 是非道庁ホームページで取組項目を確認いただき「これならできるな」と思われたら宣言していただきたいと思います.

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 「ゼロカーボン北海道事の実現に向けた事例集」は, 事業者にとって取り組みやすい事例を掲載しております.
 各事業所における具体例は後ほど説明いたします. 

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 次に,「ゼロ北ハンドブック」ですが, 非常によくできたハンドブックです. 各省庁が公表している「補助金」を目的別に検索できますので, ゼロカーボンに関する事業実施にあたっては,このハンドブックをご参考にしていただければと思います.

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 もう一つ重要なのが, 「省エネ診断」です. 当たり前の話ですが, プロに省エネ診断をしてもらうことで確実な省エネに繋がります. 費用も1~2万円と安く, 年度当初から募集を開始しておりましたが, 応募多数により7月には募集終了と聞いております. 来年度以降,省エネ診断の活用をご検討ください.

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 次に,「金融機関等の優遇」です. 詳細は道庁ホームページでご確認いただきたいのですが, 金利の利子補給があります. ゼロカーボンの取り組みは,かなりの優遇措置がありますので,是非この潮流に乗って取り組んでいただければと思います.

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 次に,「民間事業者の取り組み紹介」です. こちらは, ゼロカーボンに関する先進的な取り組みをされている企業に取材に行い,その取組内容を道庁ホームページに掲載しておりますので, 是非ご参考にしていただければと思います.

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 次に,「各業界におけるゼロカーボン」への取り組みについて簡単に紹介します.
 「クリーニング業」など, 熱を扱う業種については省エネ効果が高いといわれています. 
 先ず, 省エネ診断を受け ,コストをかけずに運用改善ができるポイントを診断していいただき, 次に高効率設備の転換を進めていただく流れとなりますが, やはり運用改善が重要になります. 社長がこれやりますと決断しても, 従業員に浸透していないと運用改善は進みません. 会社にとって非常に重要な決断のため, トップダウンによる決断かと思いますが, 従業員の協力を得ながら進めることが非常に重要なポイントになります.

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 次は,「ビジネスホテル」です. 客室便座の不要時保温停止, ボイラーの空気比適正化などによる運用改善があげられます. 次に投資改善ですが,大きな設備投資ばかりでなく, トイレ照明に人感センサーを設置する, LED照明への交換といったところも非常に重要となります. 後ほど, 道の省エネ機器導入に関する補助金について紹介しますが, LED照明の交換は間違いなく大きく効果が得られますので, 先ずはLED照明の交換を検討してはいかがでしょうか.

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 次は, 「スーパー銭湯」です.ボイラーの空気比適正化が運用改善. ろ過ポンプへのインバーター導入は投資改善となりますが,やはり従業員皆さんの協力があって形になると思います.

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 この他の事例につきましては, 「省エネ・診断ポータルサイト」をご確認ください.

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 最後に道の補助金を簡単に整理させてください.
 「省エネの補助金制度」です. 現在,公募は終了していますが,今年度,多くの事業者さんにお申し込みいただきました. 補助率2分の1と高い補助率ということで,投資回収が相当短く投資することができます. 1番多かったのは,やはりLED照明.次に空調,そして,ヒートポンプを活用したエアコンへの転換でした. この他, 冷凍設備などは技術進歩もあり,省エネ効果の高まりにより徐々に増加しているところです.

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 その他にも, 「省エネ・普及啓発セミナーも開催」しています.このようなセミナーにも, 社長はじめ, 従業員も参加していただければと思います.

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 そして最後のお得な情報ですが, 現在, 募集中の事業があります.これは「カーボンニュートラルプランの作成」ですが, 要するに企業の2030年から2050年までのカーボンニュートラルの計画を無料で作る事業が始まっています.
 15社限定となるため,必ずしも採用とはなりませんが,ご興味ある方は記載の相談窓口に一報いただければと思います.
 
説明は以上となります.ありがとうございました.