(2)地域でできる食品ロス削減運動 ~フードドライブの取組報告から~

一般社団法人 北海道消費者協会総務・組織連携グループ 総務調整部長 道髙 真理 様

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 本日は地域でできる「食品ロス削減運動」ということで, 北海道消費者協会と地域の64の消費者協会は, これまで一緒に「食品ロス削減運動」をやって参りました.
 その中で, 最近始めた「フードドライブの取組」があります. 本日は, その一端をご説明させていただければと思います.

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 消費者協会として「 SDGs」で関連してくるところは, 目標17の中の「目標12」の「つくる責任つかう責任」ということで, 持続可能な消費と生産のパターンを確保するという目標になります. この中でも,「ターゲットの12.3」のところに「食品ロスの問題」が記載されていまして2030年までに小売と消費レベルで世界の食料廃棄率を半減させると数値まで記載されています.

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 私どもは, この「食品ロス削減アンケート」を2019年に実施していまして, その中でどのぐらい食品ロスの発生状況があるかを調べたのですが, それほど多くでは無いですが, まだまだ食品ロスの発生を抑えることができるのではないかと思っています.

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 食品ロスの発生要因として, 消費者協会としてはとても残念なのですが,「賞味・消費期限切れ, 直接廃棄と呼ばれる使用提供されずに手付かずのまま廃棄された食品」のロスがいまだに多くあるということが分かってきました.

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 これをどうにかしていこうと言うことで「北海道食品ロス削減推進計画」が令和3年3月に作られていますが, ここでも意識しながら何か他にできることを考えて参りました.

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 そんな時, 「生活困窮者自立支援制度における支援状況調査」が発表されまして, これが非常に悩ましいといいますか, コロナ禍を背景に, 生活に困窮している方たちの相談が通常の2〜3倍に膨れ上がったと記されています.
 実は, 「相対的貧困」と呼ばれる人たちが, 日本人で二千万人もいると言われています.
 実際, 北海道の窓口にお聞きしましたら, 同様にやはり3倍位の相談が入ってきていたとお聞きしました. その方達は当然に食生活にも困窮していると言うことが分かってきましたので, その中で私どもが食品ロスを通じて何かできないかとなったことがフードドライブの取り組みの発端になっています.

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 令和5年9月29日に, 「北海道消費者大会」を実施し, その中の基調講演で, 食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんから「誰ひとり取り残さない食の未来~食品ロスから考える」のお話をお聞きできました.

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 その中でも, 日本人の6人に1人は月に約10万円以下で生活していると言われていました.
 また, その中の子供の貧困率と言うものも11.5%ありまして8人に1人が貧困と言われています. これはOECDの加盟国の中でも非常に高い数値と言われていました.

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 一方で, 捨てられている食べ物は日本には523万トンあり, 実は企業から廃棄されているだけではなく 家庭から捨てられている食べ物も244万トンあり, 食べ物に困っている人が2000万人もいるのに523万トンも手付かずのまま, まだ食べられるのに捨てられているという事実が日本の現状にはあるのです.

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 食品ロス削減の3Rの優先順位というものがありまして, もちろん「リデュース=ゴミを出さない」というのが最も優先順位が高いのですが, 次は, 「リュース」という事で, そのまま, 賞味期限1ヶ月前ぐらいのものを, 「フードバンク」や「フードドライブ」に寄付するという取り組みができます. 最後に「リサイクル」で肥料等になったりします.

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 本日は, 「温室効果ガス排出量削減に係る推進会議」ですので, 「ドローダウン」という本をご紹介します. この本は, 井出留美さんもご紹介していましたが「地球温暖化を逆転させる100の方法」ということで, 世界の識者200人ほどが集まって, 実際にこの地球温暖化を元に戻す, 逆転させる実現可能な具体的な解決策をランキングしています. その中で3位に, 「食品ロスの削減」があります. みなさん消費者ですので, 身近に簡単にできることということです.
 ゴミの焼却率は, 日本が世界第一位です. ゴミを燃やすことでCO2が排出されますから, ゴミを無くすということが非常に重要で, そういう意味でも, 「食品ロスの削減がCO2削減」に大変有効であるということです.
 先ほど, 道経済部の太田主幹さまから電気自動車の話もありましたが, 実はこのランキングでは26位. あと飛行機の燃料, 「燃料費の燃費向上」は43位と, やはり, 最も取り組みやすいのは,「食品ロスの削減」であると言われています.

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 では, 「フードドライブ」とは何なのかですが, フードドライブ活動というのは1967年にアメリカで発足し, 主に家庭で余っている食べ物を持ち寄り集めて, 地域の福祉団体や, フードバンク等へ寄付する. これにより, 「食品ロスの削減」と, 「生活困窮者の支援」という二つの社会課題への効果が期待できるとされています.
 身近な地域の消費者協会にフードドライブの拠点を置くことで消費者が取り組みやすくなり, 社会貢献が目に見える形でできるため, 食品ロスの意識も向上し, 大変に有効ではないかと思っています.

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 これは室蘭消費者協会が最初に作成したチラシですが, これを私たち北海道消費者協会も他の地域の協会にも活用させていただきまして, 「もったいないをありがとうに」の, 運動をどんどん広げている状況です. 室蘭消費者協会では集めた食品を, 社会福祉協議会等に提供しています.

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 釧路消費者協会は事務所に, 「フードドライブの箱」を用意して, 自由に入れていただくという形でやらせていただいています. 江別消費者協会も, イベントでパネルを掲示し, 箱の中に家庭で余っている食品を入れていただくというようにしています. 美唄消費者協会は, 地域の農家さんとかが「かぼちゃ」や「にんじん」, また, 最近漬物をしない人が増えてきて, 「大根」が余っているということで「大根」などを提供していただいたというような話も聞いています.

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 士別消費者協会は, 農家さんからお米を寄付していただき, それを5㎏1000円で販売して, そのお金を士別の社会福祉協議会に寄付したというような事例もあります.

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 このように, 地域消費者協会のフードドライブ活動が広がっていきまして, 2023年の9月現在, 約20協会の地域が取り組んでいます.

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 このような社会課題を解決するには, いろいろなパートナーシップ, つまり, 様々な機関が連携し取り組まないと解決できないというふうに, SDGsでも言われています. できれば皆さまの中で, 例えば「クリーニング組合」様のように地域に拠点があるところは, 「フードドライブ」を設置していただければ, 「身近にあって, そこに食品を寄付する, 入れる箱がある」というのがわかれば, 沢山の消費者がお店に行くのではないかなと思っています. 最近では, イオンなどでも「フードドライブ」に取り組んでいます. 特にお子さんのいる家庭は学校教育の中でSDGsを教えていますから意識が高いと思いますので, 今までとは違う層の消費者の集客にも繋がるのではないかなと思います. 私共も, そういった運動に, もしご協力できることがあれば参加させていただきたいなと思っています.

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 「第60回の北海道消費者大会」の入り口でも, 「フードドライブ」を実施させていただきました.

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 本日は, 「温室効果ガスの排出量削減に係る推進会議」ですので, 北海道が作成した, 家庭のCO2排出量が見える化アプリ「北海道ゼロチャレ家計簿」で, 私たちもこれからの運動に活用していきたいと考えています.

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 これからは, 消費者協会も, SDGsから見えてくる消費者運動を展開する必要があると考えています. 「今さえよければから, 中長期的な対応に」, 「周りの人のためから, 社会のために, それがやがて地球存続のためにつながります」.「 一滴一滴の滴が集まれば, 大河になります」.
 このことを「消費者運動の未来の形」にしていきたいと考えています.
 
説明は以上となります.