(1)省エネからはじめる「脱炭素経営」
北海道経済部ゼロカーボン ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課 主幹 太田 正亮 様
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昨年も、この場でお話をさせていただきましたが、実は「ゼロカーボンの世界」というのは、ものすごい勢いで制度も含め何もかも変わっていて、実は今日お話しする内容は昨年とは全く違う内容、少し経済的な要素を中心にお話します。
題名にあるとおり、省エネから始める脱炭素経営ですが、皆さん昨今GXという言葉を聞いたことがありますでしょうか。GX、後ほど説明しますが、グリーントランスフォーメーションというかたちになってきて、これからこういったグリーンな、そういったクリーンな世界に移行していく経済を作っていかなければならないという状況に今、具体的に入って来たということです。
省エネという言葉は、1970年代からある言葉です。ご承知のとおり中東戦争、こちらの方で石油ショックが起きたのはご存じのとおりだと思いますが、実は今の環境は、その当時と比べてどうなのかというと、実は石油への依存度は全く変わっていません。
実は石油ショック前の原油は20ドルだったのですが、これが40ドルになって石油ショックだったわけです。ところが我々が生きている世界もう70ドルです。
もう全然違う世界になってきて、要するにこの化石燃料はコスト的にもいかがなものだろうということを経済的にやっぱり把握していくということが大事だと思っています。
それでは23年度に施行されたGX推進法にもちょっと触れながらお話を進めていきたいと思います。後ろに脱炭素経営というのがありますが、これはもうみなさんの事業所の経営にこの脱炭素の要素を交えて、そのなかで省エネをどう使ったらいいのかというお話を今日させていただこうと思います。
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今日のテーマはこのようになっています。先ずゼロカーボン北海道もやはり触れなければいけないと思っています。このベースになるマインドセットをやはり社会共通の社会課題である気候変動問題は、しっかり経営者のみなさんには踏まえたうえで経営にあったっていただくと、このマインドセットが非常に大事だと思います。環境に配慮しない経済活動は犯罪に近いという言葉もあります。高度経済成長の中でみなさんもご経験されているわけです。深刻な公害問題に直面して、今日本は非常にクリーンな先進国になっていますが、この環境問題というのはやはり非常に重要なポイントで、その環境問題のまさに1番大きいのがこの人類共通のストップザ温暖化とありますが、気候変動問題であるというマインドセットが重要だと思っています。
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要はこれが重要なマインドセットの1つで、経済云々を語る前にはまず気候変動問題に対してしっかり向き合っていくという心構えが必要なのだと思います。
SDGsご存じだと思いますが、これはSDGsの中でその構造問題を図式化した図です。この土台になる環境の部分、これがなくなってしまうとこの社会、ソサエティ、経済、エコノミーもこれ当然成り立たない。まさに南富良野町のあの写真なのです。
もうどんなに経済、社会といっても結局あの洪水になってしまうと全て台無しと。
このような非常に深い問題が起こっているということです。書いてあるとおり、もう気候変動問題は世界の環境問題であって深刻な経済問題ですと。こういう認識を改めて持っていただけたらと思っています。
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その中で日本の、これは北海道の状況ですが、GX推進が非常に大きくなり、今札幌でもTeam Sapporo‐Hokkaido っていうのが設立されたニュースはみなさんご存じだと思います。
こちらは今後10年間で実は150兆円をこの脱炭素投資にお金を向けていくということが国の方針で決まっていまして、要は脱炭素投資に向けて活動している企業にはお金が向く時代がやってきているということです。
そして札幌もやはり、これはTeam Sapporo‐Hokkaidoですが、色々ラピダスの話とか色んな話が聞こえていると思いますが、あれみなさんもう電気の再生可能エネルギーじゃないとやっぱり生産活動できないっていう立場でいらっしゃる方々です。
そういった方々も含めるとやっぱりお金が必要です。だからそこにお金をどんどん投入していくということになっています。それにあわせて北海道も札幌市と一緒にこれを作り上げていこうと。そして24年6月には、国内で資産運用特区、金融資産運用特区、国家戦力特区というところに北海道と札幌市が指定されていると。こういうことが今どんどん進展してきているという状態です。
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不可逆の脱炭素の潮流とありまして、「GXとは?」とも書いておきました。
気候変動問題の対応と経済成長の両方を目指すということになりますが、重要なのはこの下の方です。GX推進法というのができたのですが、こちらで何をやっているかというのはここに書いてあるとおり、実は意外なことが書いてありまして、エネルギーの安定供給のためにはまず徹底した省エネをやってくださいと、これが今言われていることなのです。これ1970年に言われていることじゃないのです、今言われているのです。
まずこれやってくれっていうのは国の方で、これをやっている人にはお金を回しますというふうになっていまして、実は今年度から補助金が経済産業省10倍になっている事実があります。このようなことが実際に起こり始めているなかで、これ使わないと損だよってことなのです。
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GX推進会議の概要ですが、左側に書いてあるところが、エネルギーの安定供給ですが、先ほど言ったように1番上に省エネをやってと書いています。
その後再エネ、原発などなど書いていますが、まずは省エネでしょってことが1つだし、これは大企業実はほぼ終わっているのです。
日本の99.7%の企業が中小企業と言われています。この中小企業は実はこの省エネもう一段やってくれないと脱炭素は進まないよと言っているのに等しいわけです。
問題は右です。この成長志向型カーボンプライシング構想、これは何ですかっていうことですが、簡単に言うと、先ほど150兆円のお金脱炭素投資に向かいますと言いましたが、そのお金は脱炭素投資、いわゆるこの中小企業のみなさんは省エネをしっかりとやろうとしている方々にはその優遇措置をドンと設けてお金を流し込みますと言っているのです。逆にこのお金の、GXって借金ですはっきり言うと。借金はどうやって返すのですかって問題が起きますが、ただどんどん発行して返済原資がないまま発行しているわけじゃありません。実は返済原資は決まっています。返済原資は何ですかっていうと、ここに書いてあるとおりです。
28年のところです、「化石燃料を輸入業者に付加金制度する」って書いてあります。輸入業者に付加金をするとはどういうことかと言うと、輸入業者さんは価格転嫁してくわけです。要するに化石燃料を使っているみなさんに価格転嫁されるということを申し上げておきたいです。なので、残念ながら化石燃料を使っている限り、価格はどんどん今後も上がっていく。要するにGX資金の返済原資としてみなさんからお金を徴収する制度が28年から始まるのです。つまり、脱炭素に進んで取り組んでいないと、これからどんどんコストはアップしていってしまうという構造が出来上がりつつあると、法律的にはできています。
33年には有償オークションって書いてありますけど、これ何かと言うと、電力会社で化石燃料を使って発電している電気のところには有償オークションっていうのは、枠を買ってもらいますよ。これも電力会社、この枠買うのにお金が必要ですが、このお金はどっから出てくるかっていうと電気代で徴収するのです。
これからどんどんエネルギー関係のコストは上がっていく可能性がありますという事実が今日認識していく必要があるかなと思います。
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では、どうするかですが、「省エネ×脱炭素」とありますけど、一応○○にしてありますが、これは先ほどGXがいったとおり経済と環境の両立ということです。
一石○鳥と書いてありますが、脱炭素経営をすると一石五鳥です。一石二鳥って言いますよね、違います、一石五鳥です。二兎を追う者は一兎を得ずと言いますが、これを少し変えて、一兎というのは脱炭素経営を追う者は五兎を得るということです。つまり脱炭素経営というのは先ほど言ったように、お金の流れが完全に傾斜しているわけです。当然このお金使って自分の会社の力を上げた方がいいことなのです。このチャンスはやる人には必ず得られるチャンス。やらない人は必ずコストだけがアップしていく構図になっている。これをしっかり踏まえたうえで、今度、取り組む必要があるかなと思います。
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先ほどの五兎って何、一石五鳥って何ですかって、5個並べました。
エネルギーコスト低減は先ほど言ったように省エネです、まさにこれをやっていく。省エネには、ものすごい補助金が出ています。後ほど説明しますが、通常の投資の回収が半分以下になるぐらいの補助金です。 わたしが担当する補助金も、6月で消化しました。つまり、やっている人はやっている。メリットを全部は説明しませんが、最近ちょっと怖いなと思っているのはここです、この優位性。みなさんご存じのとおり、脱炭素っていうのは自社だけやっていても脱炭素にならないのです。要するにサプライヤーみんなの問題になってきます。おそらく中堅企業の方々は大企業の上位の方々から肩を叩かれているのです。「CO2の削減をどれぐらい進んでいるのだろうね」、その数字を頂戴って言われます。去年はそういったことも起きるかなんて言っていましたが、今年、東京のカンファレンスとかで聞いたところ、驚いたのですが、ほぼ一次下請の方々はこれに参加しています。
なので、脱炭素のエネルギーをどれだけ使っているか、そしてエネルギーを使った結果、CO2換算で何トンになっているかということは自社で把握して、それを上の、ここにはイオンモールと書いてありますけど、イオン北海道さんも80%くらいのサプライヤーに声かけしようと思っているとのことでした。実際、これがあらゆる業種、あらゆる事業で始まっていると。これをやってないと何が起きるというと、お付き合いしづらくなってしまうのです、大企業が。今、それが反映されているので、来年はもうほぼそういう世界が実現する、スピード感です。だからこの1年間で全く違う話をするって言ったのはそういうことです。1年で全く違ってきていると、こういうことです。
あと1つ触れたいのが、この脱炭素経営をやってCO2を把握する行動がどんなことに繋がるかというと、企業のアピールです。ちゃんとやっている企業は、そういった企業には声がかかります。逆にやっていない企業には声がかけづらい。そのため、新規開拓のチャンスもあります。
あとは人材です。人手不足がどんどん始まり、その1つの選択要素として社会課題に取り組まない会社ってどうなのかと、若い人たち真面目に考えています。SDGsは学校で学んでいます。そのため、社会課題ってやはり大事という認識が非常に高いのです。逆に言うと、これをやっておけば、やらないとリスクなのです、でもやったらチャンスなのです。ということは、モチベーションが非常に上がっていく、ロイヤリティーも上がります。つまり、有利に人財獲得ができることは、人材採用のコストもあまりいらなくなってくると。要は、脱炭素経営はメリットがこれだけありますということです。
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実はこの事業強化を図ることは売上を伸ばすより簡単です。それは、自分だけでできるからです。売上は相手がいるので難しいです。ところが、省エネは、自分だけでできる。自分だけでできるってことは自分で決断してやるかやんないかだけなので、行動としてはそれほど難しくはないのです。やり方も色々あって、表のよう上から下に、この順番守っていくということです。まずは、運用でやってみる。運用は投資しないってことです。
新しい投資をせず、運用で色々やってみる。設備投資も軽微なものから、そしてそれから見えてくるとまとまった投資をして、再エネとかに、本格的に脱炭素に向かっていくと。最初から脱炭素に向かっていくと、お金がどんどん出ます。まずは事業強化のために省エネという視点で上の2つ、これをしっかりやっていくことがポイントだと思います。
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私のおすすめこの「省エネお助け隊」です。これは、商工会議所さんがやっているのは札幌市限定です。SFEさんは全道規模です。トモエ設計は岩手県の会社のため、道東、道北に行けないという事情があります。プラットフォームさんは、全国展開している大阪の会社さんで使いづらいかもしれません。札幌市内の方はまず商工会議所の門を叩いて欲しいです。SFEも使っていただければ、先ほど出したのと同じようなものが作れますし、ここのいいところは伴走支援まで、メニューまであるのです。ここまで支援していただけるというのはなかなかないです。経営コンサルタントにお願いすると10万から50万の仕事を、みなさんは2万円とかでできるのです。これを使わないのはもったいないです。
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最後に「省エネのパートナーシップとは」、経済産業省で始めていますが、これも新しい試みになります。これも先ほど言ったGXの省エネの推進のところの経済産業省の施策です。こちらも全国でやっていますので、こういったところに、金融機関によく相談できる環境になってきますので、よく金融機関に相談していただければなと。
このパートナーシップに入ってない金融機関はほぼないです。
そのため、みなさんのお付き合いのある金融機関に、パートナーシップでちょっと金融機関のみなさんと一緒にやってきたいのだと言うと、色々なメニュー用意されていますので、色んなことが教えていただける環境になってきました。ぜひ活用ください。
カーボンニュートラル化は先ほど言ったようにベースになるマインドセットですから、サステナビリティ、持続性の担保という意味ではもう必須スキルだと思います。
お札も渋沢栄一さんになりましたが、実は渋沢栄一って論語と算盤っていう自著の中で、実は結局道徳と経営ってことで言えば、結局社会的課題にちゃんと向き合っている道徳を持っている会社、それはやはり経営、そろばんはじく経営、この両立が大事だと昔から言っています。
日本はそういったところでは非常に相性がいいのだろうと思いますので、みなさんもぜひ渋沢栄一の、渋沢栄一が我々の事業の会社運営の基本ですから、ここをよく見ていただきながらぜひ「省エネ」と「脱炭素経営」始めていただければなと思っています。
以上でございます。ありがとうございました。